三十七話目 ページ39
鮮明に憶えているなぁ。
叔父さんにためで話したら
「お前は余所者だから敬語で話せ」
って言われて頑張ったんだっけ。
捨てられたり、失望されたくなくて。
父さんは確か、蒸発して、母さんは外国に逃げて其処で不倫。
良く考えたら本当に呆れてしまうほど社会不適合者な人達だったのだな。
本格的に話せるようになったのは三歳後半。
「何で三歳の後半から話せるのよ」
「え、あ、が、頑張ったから?」
呆れながら訊いてくる野薔薇に、普通言えるものではないのか?と疑問に思う。
少なくとも周りから劣っていたらしいおれが出来たのだから出来るのだろう。
記憶が無いだけで。
鮮明に覚えている方が異常か。
覚えているからこそ、過去に固執してしまうのかも知れないな。
けれど叔父さんには感謝しているから、忘れてしまうのは忍びない。
……仕事でもするかな。
料理は暫く掛かりそうで、手持無沙汰になっている間、やらなければいけない事を不意に思い出した。
鞄からノートパソコンを出し、立ち上げる。
報告書のタブを開き、書き込む。
“報告。
本日、午後一時から呪術高専で生徒六人に体術を教えました。
動きの好い人も何人か居ましたが、その人達も含め、まだまだせいちょう”
「出来たぞー。野薔薇、ゼリーは今冷やし中だ。食後に出すから楽しみに待っとけよ」
「ハンバーグ!ちょーうまそう!」
書いている途中で料理ができ、リーダーが持ってくる。
綺麗に盛られたのは、ハンバーグとトマト、レタス。
御飯と味噌汁。
美味しそうな香りが漂い、悠仁は其れに目を輝かせる。
報告書は途中だし、でも食べたいし……。
「リーダー、此方の床で食べるのでおれの分ください」
「はい」
リーダーから箸とお皿を受け取り、当たって溢れないように少し離した場所に置く。
少しずつ食べながら報告書を書く。
“人達も含め、まだまだ成長の余地があると思われます。
この間報告した異形との戦闘に関わった生徒が内二名居ます。其の片方が特に成長できるかと思われます。
また、もう片方の先生として来た方は、ポートマフィア幹部、中原中也であることが分かりました。
次の授業では親睦を深めるだとか云う事で
少々楽しかったので、定休日が若しありましたら社員全員でしてみたいです。”
「終わったか?」
「あ、はい」
「仕事に真面目なのもいいが、飯ンときぐらい休憩しろよ」
呆れながら訊いてくるリーダーに生返事を返す。
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