三十五話目 ページ37
確実に太宰さんであれば殺意すら湧いていたであろう、と此れ程思った事はない。
仕事が無いと言ってお気楽に過ごしやがって。
内容がそれだけだったら国木田さんに怒られてしまうし、其れより何より、給料が出ない。
給料分は働かないと、太宰さんの様に為ってしまう。
あんな自 殺
彼の様に仕事をしないなど恥でしか無い。
彼の様に仕事をしないくらいだったら異能力すら捨てられる。
「もう少し膨らませますけど、酷いですね。そういえば、お腹減りましたね、今何時でしょう?」
「あー、もう八時かァ。手前等、飯は如何すんだ?」
リーダーが自身の腕に付いた時計を見る。
おれも其れを覗き込むと、八時過ぎ。
遊戯をし過ぎたか。
し過ぎでなくてもいいや、そろそろ夜ご飯を食べる時間だろう。
ゆうて命令は四つだけだけどな。
もうやりたくない。
「どうせだったら全員此処で食ってくか?志木どいて」
「そういえばゼリーも食べてないわね、ここで食べるのもありかしら」
「はぁい」
少し後ろにひかれる感覚と同時に、リーダーの声がする。
言われた通りおれが立つと、リーダーも立って伸びをする。
同時に、携帯の鳴る音がする。
「あ、おれか。すみません、出てきます」
一言断り、部屋を出て電話に出る。
“すまない、最近東京へ逃げる奴が多いとの話だ、何回か仕事を頼むかも知れないが、頼めるか”
「大丈夫です、社長の命令とあらば」
申し訳無さそうに話す社長。
別に本職だから気を抜くつもりは無いけれど、横浜だから東京に逃げれば追ってこないとでも思われているのだろうか。
東京で無いとはいえそこそこ都会だ、人も多い。
その中から対象者を見つけるのなんて慣れているのだ、更に人の多い処に行ってどうする。
此れからは幾度か授業中に呼び出される可能性も有るかもな。
“__ _____変わ____
ああ、_____
はぁい、志木くん。中也とは良くやってる?”
「はい、変わることは出来ないと思いますけど」
電話が切れる、と思った矢先、電話の奥で社長と誰かの話す声がする。
太宰さん?
細かい話の内容は聞こえないが、電話を変わってくれとでも言っているのだろう。
特に用は無い筈だが……。
特に貸しも無い筈だし、有るとすれば仕事となるけれど。
其れも東京へ取り逃がした奴だけとなるから、無いよな。
悶々と考えていると、太宰さんの声が聞こえてくる。
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