3皿目 かんげいです ページ5
チリン、とドアが来客を告げる。
読んでいた本をもとの場所に戻して
笑顔を向ける。
「いらっしゃいませ」
お客さんは初めての人だった。
初めての人が来るのは珍しいことだった。
「何名様ですか？」
キッチンからそう訪ねると
「1人です」
と男性は人差し指を立てて微笑んだ。
若い男性が1人で来たのか…。
この店は女性の来客数が多いので
さらに珍しい。
「ではこちらのカウンターにどうぞ。」
私の目の前のカウンターを指す。
その間に私は冷たい水を用意する。
グラスは綺麗に澄んで、涼しげだった。
「ご注文お決まりになりましたら
お呼びください。」
グラスを差し出しながら言うと
はい、という優しそうな声が聞こえた。
その間にフライパンなど
絶対に必要なものを取り出しておく。
「すみませーん。」
後ろから声をかけられてはい、と振り返る。
「オムライス1つ」
かしこまりました、というと
思わず影でガッツポーズ。
オムライスは私の1番のお気に入りだ。
丁寧に材料を準備すると
フライパンにバターをしく。
思い描くのはお母さんの姿。
作業は丁寧に。そして素早く。
野菜と鶏肉とご飯が心地いい音をあげたら
すかさずケチャップを入れる。
たまごはとにかくふわとろに。
半熟でオムレツのようにして
彩りのいいチキンライスへ。
中心に切れ目をいれ、広げたら完成。
ケチャップを取り出して
「何か書いてほしいものありますか？」
と尋ねる。これがうちのサービスだ。
うーん…と少し悩んだ素振りを見せて
「あなたのおすすめで」と笑う。
おすすめなんて初めてだったので
なんだか少し緊張した。
私はあの日のハートを丁寧に書いた。
黄色に映える赤いハートが可愛らしい。
「よしっ!!」
今日のオムライスは歓迎をたっぷり込める。
「お待たせ致しました、
オムライスでございます。」
男性の目の前に出すと
男性は少し微笑んで可愛いですね、と一言。
なんだかドキリと心臓が跳ねた。
「ありがとうございます
ごゆっくりどうぞ」
「いただきます」
男性は1口目を口に運ぶと目を輝かせる。
「…美味しい。」
男性が顔をあげたので目が合ってしまう。
時が止まってしまったような静寂。
店内に流れるBGMが少し遠くなる。
私の鼓動だけが響いているようで
恥ずかしくなって同時に目をそらす。
「このオムライス、
めちゃくちゃ美味しいです。」
まっすぐと届いたその言葉と笑顔は
私の心を甘い痛みとして貫いた。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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癒兎。(プロフ) - 月影さん» ありがとうございます！！長らくお待たせしてしまいすみませんでした…。前と同じようにとはいかないかもしれませんがときめきをお届け出来るように頑張ります…！ (2019年1月11日 8時) (
レス) id: 5048cf402c (このIDを非表示/違反報告)
月影(プロフ) - →これからもまだまだ大変だとは思いますが、貴方様のペースで更新頑張ってください！！私は正座待機でお待ちしております！((これからの話がとっても楽しみです！！ (2019年1月11日 6時) (レス) id: 5b225cb903 (このIDを非表示/違反報告)
月影(プロフ) - コメント失礼します。受験お疲れ様でした！更新される日を楽しみにしていたので嬉しいです！パスワード忘れちゃいますよね（笑）私も前書いていた時に忘れちゃったことあって大変でした（今はもう消してしまったんですけどね（汗）→ (2019年1月11日 6時) (レス) id: 5b225cb903 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：癒兎。 | 作成日時：2019年1月11日 1時
