【モトキ】愛情色オムライス 【Fischer's】

2皿目 にちじょうのかけら ページ3

…講義中に寝るのはこれで3日目になる。

気がついたら私の回りの人は
席を立ち、荷物をまとめていた。

「Aったら、また寝てたでしょ。
カフェのこと考えてたの？」
半ば呆れたように友達は言う。

「うん…。最近忙しくてさぁ。」
眠い目を擦りながら荷物をまとめる。

「あ、時間だ…。」
時間を見ると迫っていることに気づく。
寝ぼけたまま外へ向かっていくと、背後から
「がんばれ、A!!」
と聞こえてくる。

空を見上げるとビルからのぞく太陽が
私に起きろ!!と呼び掛ける。

昨日は、新メニューを考えるうちに
熱中してしまい眠れなかった。

こうしてカフェに専念すればするほど
学業が疎かになっていることは事実だった。

「…頑張らなくちゃなぁ。」
不意に口をついて出た頑張るは
ずいぶんと頼りないものだ。

考えていたからか、目的地はすぐそこだった。
人混みがだんだんと減ってくる。
もうすぐ私の癒しにたどり着く。

『Pisces』
白い文字が木の焦げ茶色によく映える。
ドアを開けるとチリン、と音がする。
開けると広がる世界は私の天国だった。

壁に埋め込まれた本棚には
国境を越えた様々なものがおかれている。
それは、世界を飛び回る父の趣味だ。

カウンターに並ぶ白いコーヒーカップ。
棚にならぶスパイス達。
キッチンに飾られた1輪の花。

どれもこれも私の大切な
そしてまだ未完成の日常の欠片だ。

とりあえず、カフェの中を掃除。
クイックルワイパーで床の埃をとる。
店内の全てのテーブルを水拭き。

店の外に出て、店の前を箒ではく。
ついでにブラックボードも可愛く更新。
やけに丸い私の文字が色を放つ。

本日のおすすめは卵のサンドイッチ。
私もお気に入りの一品だ。

それを書き終えると再び店内へ。
暗めの店内にあかりを灯し
お店のプレートをひっくり返す。

さぁ、今日も欠片探しを始めよう。

食 器 棚 。→←1皿目 きらきらどりーむ

• 金　運: ★☆☆☆☆
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