検索窓
今日:2 hit、昨日:11 hit、合計:50,527 hit

閑話其の伍:橙玉ト虚空ノ暗黒 ページ14

…やってもうた、やってもうたやってもうた…!
ギリギリ、と奥歯が音を鳴らす。心做しか背筋が寒さで震え始める。足元の濡れた感覚は、もう随分前から慣れてしまって、断続的にひりつくほどの寒さを伝え続けていた。

血で重くなった脇腹の着流しは、どす黒く変色している。早くなっている呼吸を抑えようとゆっくり息を吐くと、穴が空いたままの脇腹に痛みが走って、くぐもった呻き声を漏らした。

両手を交差させて後ろで縛り上げられているせいで、変化ができない。その上、口に噛ませられた猿轡はきつく、詠唱もできない。もどかしくなって手首を擦り合わせても、ピリッとした痛みが伝わってくるだけだった。

すると、不意に感じた気配に首を向ける。
紅玉が鋭く睨みつけた先には、にやにやと下衆た笑いを浮かべる男たちがいた。

「どうもどうも、初めまして、ですか。村外れの薬屋んとこの…康二さん、でしたっけ?。」

話し始めたのは、真ん中に立っていた背の高い男。狐のように細い顔には、大きな傷跡が頬から顬にかけて付いていた。

「…嗚呼、すみませんねぇ、馴れ馴れしくて。…おや、何故俺をこんな目に、とでも言いたげな顔をしてらっしゃる?ふふふっ、…それはですね、貴方の其の目、ですよ…そう!其の紅く光る美しい眼!私は美しい物にとことん目がなくて…日に透かすと光る首飾り、硝子で出来た美しい簪…色々なものを集めてきました。しかし未だ…『人の眼球』は収集していないのですよ、。」

その寒々しいほどに丁寧な口調に、康二の背筋にゾッと寒気が走る。男が、まるで大事な物を触るかのような手つきで頬に触れてくるので首を振って避けると、それすらもふふっ、と微笑んでくる。気味が悪い。

そろそろ血が足りないのか、呼吸がまた早くなるのを感じて、思わず目を閉じた。

…そもそも、俺がこんなことに巻き込まれたのは、なんでやったっけ?

…お久しぶりです…→←、



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (139 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
692人がお気に入り
設定タグ:雪男 ,
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あゆ(プロフ) - 定期的に読み直しさせて頂いてるのですが、めめこじが好きなので橙玉ト虚空ノ暗黒の続きも楽しみにしています!無理のない範囲でいつか更新して下さったら嬉しいです。 (2021年10月23日 11時) (レス) @page14 id: 6ef3ec4d5d (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - あゆさん» あゆさん、コメントありがとうございます!読み返して頂けるだけでもありがたいのに、定期的になんて…作者冥利につきます!これからもどうぞよろしくお願いします! (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - ユウさん» ユウさん、コメントありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです…!ゆっくりですが、楽しみにしていただけるのなら頑張りますね! (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - 千夜さん» 千夜さん、コメントありがとうございます!待ってていただけたなんて嬉しい限りです…!少しずつですが更新するので、よろしくお願いします! (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - 定期的に読み返していたので更新嬉しいです!一気にでも1話ずつでも、無理のないペースでの更新お待ちしております〜! (2021年10月8日 1時) (レス) @page15 id: 6ef3ec4d5d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:莉月 | 作成日時:2021年3月7日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。