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随分薄暗い森をぬけて、少し開けた木々の切れ目から、一人の男が幾分も近くなった村を見下ろしていた。その肩には、綺麗な白銀の髪を持った子供が、ぐったりとした様相で載せられていた。

「…ふぅ、餓鬼とはいえ、担いで逃げんのも苦労すんなぁ……一旦、夜明け前まで待つとするか。暗くなると大事な商品に傷が着いちまうかもしれねぇしな…」

ため息をついて、抱えていた子供…ラウールを持ち直し、後ろに見つけた山小屋へ向かおうとして、振り返る。…振り返った、つもりだったのだが。

突然、黒い幕を垂らされたかのように目の前が真っ暗になり、男は思わず息を飲む。すると、『頭上から』聞こえるはずも無いのに、声がした。


亮「…みぃつけた。」
「?!」

びくり、と男の体が動かなくなる。肩の重みが無くなり、頭上でばさり、ばさりと大きな羽根の音が不気味に響いた。

ゆっくりと視界が開けていく。目の前に立っていたのは、黒い着流しの青年。…その両目は、青年自身の手で塞がれていた。

青年が両目を塞いでいた手をゆっくりと下げていく。此方を見ていたのは、いっそ禍々しいほどに赤黒い一対の瞳。…いや、八対。

黒い着流しの青年が手を下げきった途端、いつの間にかかかっていた黒い霧がはれ、沈み掛けの夕日が、異様な影を七つ映し出した。

ばさり、と大きな羽をはためかせた青年が菫色の、1人だけ黒い目の青年にそっと手渡したのは、先程まで己の肩に乗っていたはずの白銀の髪の少年だった。


「っは、お、お、お前らっ、何者だ!山賊か?!」

照「…あ゙?賊はどっちだよ、うちの家族勝手に連れていきやがって…塵になる覚悟ぐらいはあんだろうなァ?」
佐「にゃははっ!照、めっちゃ怒ってるじゃん!…まぁ俺も許す気は無いけど。」
翔「…妖じゃねぇのかよ。つまんねぇの…」
涼「そんな事言わないの、翔太…さて、どう料理しようか。」
蓮「…許さない。」
康「すまんなぁ、あんたにも事情があるんやろうけど…こればっかりは、自業自得やで?…命乞いは醜いからやめてや。一息に殺したる。」

亮「…辰哉、ラウールお願い。目立った怪我はしてないけど、眠らされてるから危ないかも。」
辰「…分かった、そっちは頼む。…思う存分、暴れてきて。」

猿轡をとってやりながら、少し悔しそうに頷いた辰哉に、亮平は力強く頷き返す。空に鴉が一声鳴いて、悲鳴と痛々しい音は、木のざわめきに飲み込まれた。

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あゆ(プロフ) - 定期的に読み直しさせて頂いてるのですが、めめこじが好きなので橙玉ト虚空ノ暗黒の続きも楽しみにしています!無理のない範囲でいつか更新して下さったら嬉しいです。 (2021年10月23日 11時) (レス) @page14 id: 6ef3ec4d5d (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - あゆさん» あゆさん、コメントありがとうございます!読み返して頂けるだけでもありがたいのに、定期的になんて…作者冥利につきます!これからもどうぞよろしくお願いします! (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - ユウさん» ユウさん、コメントありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです…!ゆっくりですが、楽しみにしていただけるのなら頑張りますね! (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - 千夜さん» 千夜さん、コメントありがとうございます!待ってていただけたなんて嬉しい限りです…!少しずつですが更新するので、よろしくお願いします! (2021年10月8日 7時) (レス) id: bc0aa38375 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - 定期的に読み返していたので更新嬉しいです!一気にでも1話ずつでも、無理のないペースでの更新お待ちしております〜! (2021年10月8日 1時) (レス) @page15 id: 6ef3ec4d5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:莉月 | 作成日時:2021年3月7日 9時

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