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｢っ！ぁ、くっ、離せ…っ！っ…、い、き…できなっ、っ！｣
その妖気が人を象った物へと変化して、伸びた髪が辰哉の首を締め上げる。じたばたと藻掻くが、足は地面につかない。
首元の髪らしきものを掴んでみても力は緩まない。狭くなる視界の端で、長い髪を持った何かの顔が此方を向いたのが見えて、思わず喉がひっ、と鳴った。
片方が落窪んで黒くなった眼窩と、顔に走る大きな傷。頬は焼けただれたように赤く、口元だけが愉悦に歪んで、呻き声を漏らしていた。
まるで何時か絵巻で見たような、おぞましい姿。嗚呼、こういうのを、寺子屋の先生は何と言っていたっけ、
｢っも、物の怪…っ?!っかはっ、ひゅっ、っ?!｣
痺れ始めた足先の方から、髪が幾筋も体を這い始める。気持ち悪くてしょうがない、必死に力を入れるが、上手いこと言うことを聞いてくれなかった。
段々目の前が暗くなる。ラウールは無事だろうか、と振り返りたいが、その力すらも出なくなって。
(っ何で俺が、こんなことに…っ、助けて、神様でも夜叉でも良いから、誰か…ッ)
もう無理だ、と手から力が抜ける。願いを告げる声すらも出ない。
嗚呼、此処で死ぬのか。
視界が真っ暗になりかけた辰哉の耳に、不意に『声』が反響した。それはまるで、暗闇に射す光のように鋭くて、
｢…俺らの守護域で勝手なことしてんじゃねぇぞ、物の怪『貂』！｣
刹那、銀色の光が視界を割いた。
首に巻きついていた髪が急に力を失い、辰哉の体は地面に叩きつけられる…と思いきや、何かに受け止められた。
急に大量の空気を吸った所為で、思わず咳き込む。涙で滲んだ視界に、金棒のようなものを持った二つ角の鬼が見えた気がして、もしかして自分はもう死んだのだろうか、とぼんやり考えた。
｢…あっれぇ？、『照』だけで事足りたねこれ。成仏してください、っと…で、『めめ』が抱えてるその『人間』は大丈夫なの？｣
覗き込んできた人影の頭にも揺れる猫耳が見えて、あ、これ死んでるのかも、と目を瞬いた。
目を凝らそうとした途端、急な眠気が襲ってくる。
だめだ、この状況もよく分かってないのに、…
意思に反してゆっくりと閉じていく重い瞼は、遂にピタリと閉じられて。
｢あれ、この人…あー、だから『寄せちゃったのか』。｣
気絶したのかぐったりとしている辰哉を抱えた長身の影が納得したように頷く。三つの影には、それぞれ人ならざる者を表すような奇妙な何かが揺らめいていた。
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莉月(プロフ) - 優さん» こちらこそリクエストありがとうございました！楽しんでいただけていたら幸いです。これからもよろしくお願いします！ (2021年1月27日 7時) (
レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - お話書いて頂きありがとうございました！これからもお話楽しみにしています！ (2021年1月26日 21時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - リクエストはここで締め切らせていただきます！リクエストしていただいた皆様、ありがとうございました！お話になるまで、少々お待ちください。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - さのちゃんさん» 最後の一枠なので大丈夫ですよー！リクエストありがとうございます。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
さのちゃん(プロフ) - まだリクエスト大丈夫でしょうか？橙くんが怪我して敵に捕まって黒くんがすごく怒るお話を読みたいです。よろしくお願いします！ (2021年1月5日 21時) (レス) id: f84afddcf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：莉月 | 作成日時：2020年5月30日 12時
