閑話其の壱:常闇ノ百目 ページ38
月明かりもろくに差し込まない、木々の生い茂った森の中。暗闇にかさりかさりと草や木々が嗤い声を立て、ふわりと漂う空気はやけに不気味だった。
亮「依頼どおりなら、確かこの辺りのはずなんだけど…何にも感じないな…」
涼「…それらしい気配もないね。"彼奴ら”ならもっと気配があってもいい気がするけど。」
辺りを注意深く見回した亮平と涼太が目線を交わす。どうやら依頼主が言っていた"彼奴ら"は今夜は未だ出てきていないようだった。
「夜な夜な山に出る亡霊の調査をしてほしい」という依頼を受けたのはほんの数時間前。薬屋の仕事で来られない辰哉とラウールの子守をしている佐久間を除いた六人が森に入って調査を始めたは良いものの、歩きだしてもう半刻ほどになっても、未だに何も起きてはいなかった。
蓮「一応武器持ってきたけど、必要なかったかもっすね。…それより康二、もうそろそろ離れてくんない？暑い…」
康「嫌や！何があるか分からんもん！…それに、今回の相手、妖やのうて亡霊なんやろ…？」
蓮「似たようなもんでしょ。…ほら、しょっぴーと照くんも。俺らが怖がってどうすんの〜。」
涼「だって。ほら、翔太も探すの手伝って。」
亮「照も、そろそろ俺にひっつかないで気配探ってよ〜…照の方が鼻利くんだから。」
もう！と言っていじけた子供のように頬を膨らませた亮平が、照の方を振り返る。大きな体を随分縮めて上目遣いに此方を見た照は、目にうっすら涙を浮かべたまますっと宙に目をやって鼻をひくつかせた。
照「…何の匂いもしねえ。つーか、森とか獣の匂いばっかで、よく分かんねえな…」
翔「ほんっと無理…てか、まず亡霊って匂いとか気配とかすんの？」
亮「…さあ。俺も実際には殆ど見たこと無いし、分かんないことだらけだけど…良く言われてるのは、足がない、とか、透けてる、とか…夜中に、"鬼火"と現れるとか…って、めめ？どうかした？」
蓮「…出た。」
照「っえ？で、出た、って、何が…っうわぁぁぁ！」
叫び声をあげて数歩後ろに下がった照に、え？！と全員がそちらを向く。
蓮と照の視線の先、木と木の間から、ふわりふわりと青白い炎が幾つも漂ってくる。そして、其の不気味な光の元でかしゃん…かしゃん…と音を立てて此方へ歩み寄ってくる人影に目を凝らすと、それは。
頭に刺さった幾本もの矢。彼方此方から流れ出る血は、ぼろぼろの衣を赤黒く染めていた。…そして何より、纏っているのは古びた甲冑。
蓮「っ、落武者…？！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1064人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
莉月(プロフ) - 優さん» こちらこそリクエストありがとうございました！楽しんでいただけていたら幸いです。これからもよろしくお願いします！ (2021年1月27日 7時) (
レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - お話書いて頂きありがとうございました！これからもお話楽しみにしています！ (2021年1月26日 21時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - リクエストはここで締め切らせていただきます！リクエストしていただいた皆様、ありがとうございました！お話になるまで、少々お待ちください。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - さのちゃんさん» 最後の一枠なので大丈夫ですよー！リクエストありがとうございます。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
さのちゃん(プロフ) - まだリクエスト大丈夫でしょうか？橙くんが怪我して敵に捕まって黒くんがすごく怒るお話を読みたいです。よろしくお願いします！ (2021年1月5日 21時) (レス) id: f84afddcf2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：莉月 | 作成日時：2020年5月30日 12時
