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序章:或る薬屋の邂逅 ページ1

…時は昔、まだ人々の間に『身分』という垣根がうっすらと残っていた頃のお話。

煌々と輝く朝日が、山間の或る小さな村を照らし出す。

村外れの家で、布団から半分ずり落ちて寝ていた1人の青年は、小さく呻いて、うっすらと目を開けた。

「んぁ……もぅあさ?早すぎ…ふぁぁあ…」

ごろり、と寝返りを打つと、家の中に射し込む朝日が眩しく顔にあたる顔を顰めて起き上がると、肌蹴ていた寝間着がわりの薄い浴衣を軽く直して、1つ大きく伸びをした。

「ん…なんか今日仕事あったっけ…って、そういや喜助さんとこのお薬、そろそろ切れそうなんだっけ…そろそろキキョウは取りに行かないと無いよなぁ…」

ブツブツと呟きながら草履を引っ掛け、土間におりた青年は昨日の夕餉の鍋を取ると火鉢で少し温めて皿に盛った。

朝日に当たって、眩しそうに目を細めた青年の焦げ茶色の目に、うっすらと菫色が滲みでる。青年は黙々と朝餉を片付けていつも通りの、薄い青紫の着物に着替えると外へ出た。

玄関に掛る「御薬處」の看板を表に返すと、看板に付いた白い花がゆらりと揺れた。この間、頼まれた薬を届けに行った先で貰った、鈴のように小さな白い花。どうやら「鈴蘭」というらしい。

雪のような色のこの花は、滅多に生えないんだ、と笑った老人の顔を思い出し、まじまじと鈴蘭を見つめた。

「にしても…さして世話もしてないのに、枯れないんだな、この花。」

首を捻るが、まぁ考えても分からないし、と思い直して、傾いた看板を直す。本当に音がなりそうな可憐な花をもう一度見て、庭に放っておいたままの籠を背負って歩き出した。

「おぉ辰哉くん!朝早くから精が出るねぇ。」
「おはようございます、太一郎さん。お元気そうでなによりですよ。あ、ちゃんとお薬取りに来て下さいね?そろそろ無くなる頃でしょ?」

「あら、薬屋の!おはよう、今日も良い男だねぇ〜」
「おはようございます。キクさんこそ、今日もお綺麗じゃないですか!」

山への道の途中、幾度か村人と立ち話をしながら「辰哉」と呼ばれた青年は山へと足を踏み入れる。

さわさわと木々が揺れる音がするのを聞きながら足を止めた青年は、立ったまま暫し考え込んだ。

(…沢の方はこの間だいたい取り尽くしたし…キキョウなら神社の方が生えてるかな。久々に行ってみるか〜、)

青年は歩き慣れた山道を、山奥の神社の方へ歩き始める。

青年の背後で、草木が何かを予兆するようにかさりかさりと嗤い声を立てた。

、→



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莉月(プロフ) - 優さん» こちらこそリクエストありがとうございました!楽しんでいただけていたら幸いです。これからもよろしくお願いします! (2021年1月27日 7時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - お話書いて頂きありがとうございました!これからもお話楽しみにしています! (2021年1月26日 21時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - リクエストはここで締め切らせていただきます!リクエストしていただいた皆様、ありがとうございました!お話になるまで、少々お待ちください。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - さのちゃんさん» 最後の一枠なので大丈夫ですよー!リクエストありがとうございます。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
さのちゃん(プロフ) - まだリクエスト大丈夫でしょうか?橙くんが怪我して敵に捕まって黒くんがすごく怒るお話を読みたいです。よろしくお願いします! (2021年1月5日 21時) (レス) id: f84afddcf2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:莉月 | 作成日時:2020年5月30日 12時

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