他人から ページ10
「ほら、泣いたんだから水分取れよ。」
目の前にある自販機で買ったジュースを俺に差し出す。
あの後、近くにあった公園に大人しくついてきた。
「…さっきはすみませんでした。…八つ当たりして。」
鼻をすすりながらさっきのことを謝る。昨日知り合ったばかりのほぼ初対面の人に泣きながら喚き散らすなんて、最低すぎる。
「別にいいって、俺も悪かったな。触ったりして、昨日も泣くほど怖いことやっちまって、これじゃ脅して奢らせたようなもんだよな。」
笑って許してくれる彼。なんなら逆上した俺に謝ってくる。
「…なあ、いつからそうなったのか聞いてもいいか。生まれつき…なんてことはないよな。」
「…」
ベンチの上に体育座りをして口元を腕で隠す。
「高2のとき、…なんでそうなったかは言いたくありません。」
高校2年生、まだ俺が16歳だった春の悍ましい記憶が脳裏をちらつくようで足を包む腕に力を込める。
「…それから一年ぐらい部屋に閉じこもって高校も退学して、今は兄弟と店員やお客さんとしか関わらないです。でも今は指先がちょっと触れるくらいなら我慢できるくらい成長したんです。」
「…それって治るのか。」
「わかりません。…でも絶対に治らないわけではないです。精神的なものだから、俺の認識が正常なものに戻れば直るって先生が。」
「…よし。決めた。」
先程までとは違う大きな声で言い俺と目を合わす彼。
「何をですか。」
「俺がお前のそれ治してやる。お前だって治したいんだろう?好きでこんなんじゃないって言ってたし。」
そうだ元には戻りたい、昔みたいに友達を作って普通の人と同じように働けるようになりたい。
「…直すってどうやって。」
「それは…とりあえず人に慣れるとか?お前兄弟以外とまともに関わってないんだろう。俺と話して怖くないって思えたら人に触れるようになるんじゃねーかな。」
そうだ、一郎くんや二郎に三郎には迷惑をかけている、その苦悩を取り除いてやりたい。コンビニのバイトでいつか元通りの生活に戻るという考えにも無理があると気づき始めていた。
これはチャンスじゃないのか、昔の俺に戻って兄弟達から頼ってもらえるようになるための。
「…やります、それ、治るかはわからないけど。でも治したいから、俺が昔みたいになれるように手伝ってくれますか?」
「おう!当たり前だ!飯も奢ってもらったし、それにトモダチだからな!」
笑ってそういう彼、高校2年生以来、俺に始めてできた友達だった。
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リエル(プロフ) - 終わり…!?終わりになってる!? (2018年12月27日 23時) (レス) id: 4f0744403a (このIDを非表示/違反報告)
黒武(プロフ) - 主は弟くんも触れられないのかな…?一郎くんとの差別に傷付いている主くんがいてもおもしろいと思います。他キャラの出会いも楽しみにしてます。続き待ってます。 (2018年11月5日 2時) (レス) id: f0ec619330 (このIDを非表示/違反報告)
瑠威神(プロフ) - 一兄!!カッコよすぎる。。更新待ってます! (2018年10月19日 19時) (レス) id: a94da70a54 (このIDを非表示/違反報告)
ゲイムオーバー(プロフ) - すごい私の誕生日も7月26日に (2018年8月21日 19時) (レス) id: e40dfd6764 (このIDを非表示/違反報告)
粟之助 - めちゃめちゃすきです………………… (2018年8月16日 9時) (レス) id: bc9f12e237 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2018年8月2日 16時