第十九篇 別れ ページ19
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「不確定要素は大きいでしょう。異能力の特異点の問題もある」
『……特異点って?』
「織田作さん、ジイドに対して異能力を使った時、何時もと違う事が起きませんでしたか?」
「……嗚呼、起きた」
ジイドの銃弾を右側に避けて撃たれる未来を見た時……予測が巻き戻され、今度は左側に避けて撃たれる未来が見えた事を思い出す。
織田は坂口の言葉をじっと待った。
「複数の異能力が干渉し合うと極稀に、全く予想もしなかった方向に異能力が暴走するという現象が政府機関によって確認されています。
……今の話、本当はしてはいけない事になっています。僕がこうして会っている事も、上層部に知られたら大問題になります。当面は姿を隠さなくては──」
「おやおや、まるで此処から自分が生きて出られるみたいな口振りだね」
『……此処を戦場にする心算?』
「……僕のせいです。僕が間違っていました」
カラン、とグラスの氷が鳴る。
「この場所だけは、皆さんと立場を越えて会えるような気が勝手にしていました」
「安吾。私の気が変わらない内に消えるんだ」
「はっ、……」
「別に悲しんでいるんじゃない。最初から判っていた事だ。安吾が異能特務課であろうと無かろうと、失いたく無い物は必ず失われる。
求める価値のある物は皆、手に入れた瞬間に失う事が約束されている。苦しい生を引き延ばしてまで追い求める物なんて───何も無い」
太宰がそう云うと、暫くして坂口は静かに前を向いた。
そして、グラスを見ながら、ぽつりと呟く。
「……太宰君、織田作さん、徳富さん……何時か時代が変わって特務課もポートマフィアも無い、我々がもっと自由な立場になったら、また此処で……」
「云うな安吾」
織田が坂口の言葉を遮った。
「───其れ以上、云うな」
一同の間に再び沈黙が訪れる。
暫くして、坂口は席を立ち、ルパンを出て行った。
誰も口を開かなかった。
沈黙の中、徳富が呟いた。
『……ばいばい、安吾』
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こめこめコメダ(プロフ) - てかみそさん» 仕方ねぇ続けるべ☆いぇい☆ (2022年12月22日 14時) (レス) id: b8ad08ce24 (このIDを非表示/違反報告)
てかみそ - こめこめコメダさん» 辞めたら………いやなんもしないけどほら。私はさ。プリ小説やってるし?私の思いもこめさんに継いでもらうって決めてたし((((((((殴 (2022年12月22日 14時) (レス) id: ca294d51e0 (このIDを非表示/違反報告)
こめこめコメダ(プロフ) - てかみそさん» うぅ〜……私も最近占ツクしんどくなってきたし辞めちゃおっかな… (2022年12月21日 3時) (レス) id: 3c5b67e3ca (このIDを非表示/違反報告)
てかみそ - こめこめコメダさん» まじだよ (2022年12月20日 18時) (レス) id: ca294d51e0 (このIDを非表示/違反報告)
こめこめコメダ(プロフ) - てかみそさん» マジかよ…… (2022年12月20日 11時) (レス) id: b8ad08ce24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめこめコメダ | 作成日時:2022年11月5日 19時