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試合開始から、C組はバンバンとゴールを決め続けて、あっという間に私たちと点数を離していく。

でもA組もやられるばかりではなく、ボールを持てばゴールを決め続けて、点差を縮めていく。


どちらも一歩も引かない戦いは、あと残り30秒だった。

そんな30秒で、点差は2点C組が有利だった。



「あと残り30秒だよ!」

「2点差だけど…1C相手じゃ、難しいよ」



そんな外野からの声が聞こえてくる。



「みんな、諦めちゃダメ!最後まで戦うわよ!」



中原さんの叫び声に、みんなも必死になってボールを追いかけるけど、相手のチームはそれを軽々とかわしてしまう。


ああ、ダメか…と思ったその時、私の元へボールが降って来た。



「立花さん!私にパスして!」



佐々木さんが私の近くにやって来て、パスをするように指示する。

ボールをパスしようとして、私は動きを止めた。



ここでパスをして本当に勝てるの?

あと3点差を、どうやって巻き返す?



そんな考えが次々に浮かんで来た。



「立花さん!どうしたの!?」



中原さんの声でハッと我に返った私は、何も考えずに走り出していた。

誰にもパスをすることなく、ドリブルで相手のディフェンスをかわして進んでいく。



私が体育の時間になるたびに憂鬱になる理由。

それは、自分が運動神経がいいということをみんなに隠しているためだった。

私は運動なら、バスケもバレーもテニスも陸上も、本当は全て好き。

でも、地味な私が運動神経がいいなんて言ったら、絶対に何かしら噂されると考えたら、怖くなってしまって、今まで隠し続けて来たんだ。


だけど、今はもうそんな秘密などどうでもよかった。


そんなことよりも決勝にまで残ったみんなの頑張りを、無駄にはしたくないと言う気持ちが私を動かした。

3点差を巻き返すには、私も本気にならなきゃ…



「え!?」



驚いたような声が、私の耳に届く。

私はそんな声を無視して、ボールを取られないように相手をかわす。



「いいわ、立花さん!そのままゴールに向かって投げてー!」



クラスメイトの女子の声と同時に、私はボールをゴールに向かって投げた。

私が投げた位置は、ゴールに入れば3ポイントが入り、逆転することができる。



お願い、どうか入って…!


大きな弧を描いたボールは、そのままゴールにスパッと吸い込まれ、それと同時に試合終了を告げるホイッスルが鳴る。




体育館内が、わあああああっと歓声に包まれた。

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作者名:心愛 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Yuna101/  
作成日時:2017年10月26日 18時

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