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「若武くんたちと、あの子が友達…?」
みんなは驚きが隠せないようだった。
それもそのはずだ。
私みたいな地味な子が、KZっていうアイドル的存在の子たちと知り合いだなんて、信じられる人はそうそういない。
ああ、明日からさらに陰口を言われる毎日になるんだ…
とりあえず、私はこの場から逃げるためにトイレに逃げ込むことにした。
廊下に出て、少し進んだところで私の前に誰かが立ちふさがるのが分かった。
「ねえ、あんた」
その子は背の高い女の子だった。
人との接点がない私でも、その女の子のことは知っている。
学年でもかなり目立つ3人組の1人だからだ。
その中でもリーダー格の瀬山カレンさんは、学年中でも結構な有名人だ。
美人で背が高く、性格も明るくて騒がしく、密かに狙う男子も多い。
そんな瀬山さんとは話したことがなかったのだが…
「さっきの若武くんの言葉、聞いたよ。あんた、立花?って言ったっけ」
私の名前を知っているのは意外だった。
瀬山さんがまさか私の名前を知ってるだなんて…
「あんた、KZと友達なんだってね」
う…
瀬山さんたちに知られてしまうと、明日からが怖い!
でも、私は黙っているつもりだった。
何を言われるか分からないけど、とにかく何か言われるのは確実。
観念して目をつぶったその途端。
「すごいじゃん、あんた」
瀬山さんから意外な言葉が飛び出した。
「え…」
「あたしさ、若武くんが好きなの。だけど声かけられなくてさ。ずっと遠くから見てたんだ。
でも、あんたは普通に話せていたでしょ?それ見てあんたのこと、すげーって思ってさ」
は、はあ…
瀬山さんは頭がついていかない私を、柔らかい笑みで見つめる。
「それで、あたしねあんたのこともっと知りたいって仲良くしたいって思った。
だからさ、あたしたちと友達にならない?若武くんたちのことも教えてよ。あ、でも、そうしちゃうと若武くん目当てで近づいちゃったことになるか…」
最後に呟いた瀬山さんに、私は思わず吹き出してしまった。
何だ、そんなに怖がることじゃなかったんだ。
それなら、もっと胸を張って堂々としてもいいんだ。
それに気づくことができた私は、大きく頷いた。
「うん、私も仲良くなりたい」
「え?ほんと!?マジか、やった!」
そう言って喜ぶ瀬山さんを見ながら、私は密かに友達を作るきっかけをくれた若武に少し感謝したのだった。
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作者名:心愛 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Yuna101/
作成日時:2017年10月26日 18時