KZ＊短編集

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まあ、そういうわけだった。

「ほら、どっちにするんだ上杉？まさかどっちも食べないなんてことはないよな上杉？」

若武のやつはこの状況を相当楽しんでいるらしく、俺に皿をぐいぐいと押し付けてくる。

こいつ、ぜってえあとでやり返す…！許さねえ…！

にしても、シュークリームとプリンか…

俺は若武の手の上にある２つを交互に見る。

さっきも言ったが、せっかく立花が買ってきてくれたのだから、食べないわけにはいかない。

シュークリームの生地の中にはたくさんのカスタードが入っている。

プリンだってプリンそのもの全体がカスタードで出来ている。

２つともカスタード入りだ。

どっちを食べようが、結局はカスタードを食べることに変わりはない。

決心した俺は、未だ意地の悪い笑みを浮かべている若武の手からプリンを奪い取った。

プリンなら底にカラメルソースとかっていうのが入っているから、食べられそうだと思った単純な理由からだった。

(ほら見とけ！お前の思った通りにはいかねーんだよ！)

未だにニヤニヤと笑っている若武を睨みながら、スプーンですくい、若武のやつに見せつけるようにして思い切って一口食べる。

思った通りカスタードの味が思いっきり広がった。

だが、俺はなぜかそれが不味いとは思わなかった。

「……うめーな、これ」

そう呟くと、パッと立花の顔が明るくなる。

「でしょ？ここのプリン本当に美味しくて、私もとってもお気に入りでね」

立花に聞いたところによると、これはプリン嫌いでも食べられるほど人気があるらしい。

だから俺が食えるわけだ、と納得したところで、若武は反対に納得がいかないという顔をした。

「くそっ、納得いかねえ！そんなに美味いプリンなら俺もプリン食う！」

「若武はさっきシュークリーム食っただろ」

七鬼のツッコミに若武は悔しそうに俺をにらみ、俺の持っているプリンの容器に手を伸ばしてきた。

「おい、上杉！俺にもよこせ！」

「やだね」

「何だと！」

暴れる若武を無視しながら、苦手なものでも食えるものはあるもんだなんて思う俺だった。