第一章 8 ページ9
「呼び捨ては首領補佐官殿からの命令だ。少なくとも俺はそう捉えた。」
「いや、命令では無いけど。」
不満を垂れる治に、織田作は真顔のままそう云ったので私はすかさずツッコんでおく。
私の言葉に治は「ほらぁ〜!」と、頬を膨らませていた。
「えぇと…星彩。首領補佐ともあろう方が何故後始末なんて汚れ仕事を?」
「嗚呼……、聞かれると思ってたよ。というか、寧ろ聞かれなくちゃ頸をこの場で斬っていたかもしれないけれど。と、其れは置いておいて……、理由は単純だよ。どんな世界でも初心は忘れるべきじゃあない。治もそう思うだろう?」
「まぁね、時には振り返って下の者の気持ちになってみることも重要だ。」
織田作からごもっともな問いかけに、私は少し織田作を試してみながら答える。
一方、私に話題を振られた治は、少し意外そうな顔をして答えると、ぼそりと「……最も星彩さんには必要ないと思うけれど。」と付け加えた。
私は其れに気が付かない振りをして、織田作に向きなおして拳銃を構える。
流れるように、至って自然に。
「…在れ?避けないの、織田作?」
「…星彩は俺を撃たない。」
依然愛称の口にする私を、彼は真っ直ぐと見詰めていた。
「其れは如何して?私は首領の忠実なる手足だよ。もしかすると君を始末する為に来たのかもしれない。」
「確かにその可能性は拭えないな。……でも、星彩は俺を撃たない。」
「証拠は?その根拠は?」
私は織田作の額に銃口を押し付けたまま、口の端を無理矢理上げて次々と問いかける。
一見微笑んでいるように見えるのに、目は狂っているのだ。狂気の色に溢れているのだ。
それは、例え治だったとしても一瞬は恐怖の影が映る。
実際、今も私に対して少し恐怖……厭、畏怖を向けているのを感じ取っていた。
それだというのに、恐怖を感じている筈の織田作は真っ直ぐと私を見ていて、その瞳には緊張の色は合っても恐怖などの感情は全く無かった。
「…星彩は、俺を撃たない。」
私の問いかけには答えず、織田作は真っ直ぐとそう云った。
そんな織田作に私は苛つきを覚え、思わず力が入ってしまい、結果的に引き金を引く。
額に当たっている銃口から放たれた弾丸は、織田作の額を射抜く…ことは無く、少し後ろにある壁にめり込んだ。
織田作はと言うと、私が引き金を引く
「……成程、未来予知の異能、ね。」
私は拳銃の安全装置を起動させ、溜息を吐いてそう呟いた。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月27日 16時