第一章 2 ページ3
「……やぁ、星彩さん!お早う、善い朝だね!」
そう云った人物は、躰中に包帯を巻きつけた、少年と呼んでもまだ通る様な、未だ幼さが抜けきっていない男だった。
……その名を、___
「……お早う、治。全く、如何して何時も
___太宰治と云った。
呆れたようにそう云いながら、自身が食べる筈だったトーストを頬張る太宰に彼女……大狼は台所に立つと、朝食の準備を始める。
食パンを焼いて、即席のスウプを用意し、其れから前日に作って置いたサラドを机に置くと匙と突き匙を用意して椅子に座った。
その動作に無駄は無く、流れる様に美しかった事から手馴れている事が伺える。
そんな大狼を、太宰は太陽でも見ているかのように眩しそうに目を細めて瞳に映す。
「……そう云えば、星彩さんは何時から一人暮らししているの?とても慣れているだろう?」
ふと思い出したようにそう云った太宰に、大狼は少しスウプを口に運んでから答える。
「一人暮らし自体は5年ぐらい?でも家事は……13年ぐらいはしてると思う。勿論、最初は教わりながらだったけれど。」
「へぇ?星彩さん、ご両親が共働きだったのかい?」
「如何してそう思ったの、治……。私、生まれてすぐ捨てられたらしいの。で、森さん……厭、
「……森さんの右腕として。」
大狼の言葉を引き取るようにそう云った太宰を大狼は横目で見ると、何も云わず其のまま口にサラドを、食パンを、スウプを運ぶ。
当たり前のように、その動作一つ一つまでもが思わず見惚れてしまう程に美しいのであった。
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※サラド…サラダのこと。
※匙…スプーンのこと。
※突き匙…フォークのこと。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月27日 16時