兄は、オレンジのひつじさん2

いない ページ21

ジェルside


『お兄ちゃん、助けて！』


こっち方面か……。
待っててな、A。
お兄ちゃん、絶対行ったるからな。

ここのはずだけど、人影のようなものがない。
Aには隠れてるように言っておいたけれど、どこに隠れてるんだ？


ジ「A、A！」


俺は何度も妹の名前を呼んだ。
それでも、何も返事がこない。


ジ「A、お兄ちゃんやで！？ お兄ちゃん、来たで！」


ダメだ、やっぱり返事がない。


まさか……来るのが遅すぎたせいか？

それで、Aは逃げ出したことがバレて誘拐犯に再び……？
あるいは、他の誘拐犯に連れ去られたか？

考えが、どんどん悪い方向に進んでいく。


プルルルル、プルルルル……。


また電話だ。


「もしもし」


『もしもし、Aさんのお兄さんのジェルさんでよろしかったでしょうか？』


「はい！」


相手は、警察の方だった。


『たった今、妹さんを保護しましたので……交番まで来られますでしょうか？』


保護……。
もしかして、ここに隠れているところを警察が見つけたってこと？


「すぐに行きます！」


A、今度こそ……。

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