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中原「 ぜってェ勝手にどっか行くんじゃねェぞ。 」
「 はいはい。 」
横浜、某所にて。
この会話は毎朝の繰り返しだった。
洒落た一軒家で、洒落た玄関で、
仕事に行ってくると云いながらなかなか潔く玄関から出ない夫 _ 中原中也を宥めるのがAの仕事。
中原「 知らねェ奴が来たら玄関開けずに俺に連絡しろ。 」
「 はいはい、判ったから。 」
毎度毎度母親かと突っ込みたくなる気持ちを抑えて微笑んだAは何時もの帽子を中也の頭に優しく置く。
中也は其の妻の姿に満足、と云った顔で微笑み返したあと 「 今日の晩飯、一緒に酒でも飲むか。 」 と呟いてAの額に小さくキスを落とした。
「 それじゃあ… 今日はご馳走を作らなくちゃ。
セールは昼からだし、スーパー行ってもいい? 」
さっきまで上機嫌だった中也はあからさまに嫌そうな顔をして何故外に出るんだとでも云いたいような目線をAに向ける。
またか、なんて慣れた手つきで中也の背中に腕を回し抱きしめた。
「 中也が久々に早く帰ってこれる日だし…
張り切って作りたいのになぁ… 」
まるで猫なで声でそう呟いたAに中也が勝てる訳もなく、呆気なくスーパーへの外出の許可を出してしまった。
中原「 その代わり、知らねェ奴との接触はするな。
あと偶然会ったなら接触するのは知ってる顔でも頭領や姐さんみたいな信頼のおける奴だけにしろよ。 」
「 はいはい。 判った判った。
仕事、遅れちゃうよ? 」
中原「 ん。 」
時計を見た中也は焦ることなく、ただ名残惜しそうに返事をする。
玄関のドアノブに手をかけた時だった。
「 嗚呼、中也。 忘れ物。 」
そうAに云われ何か忘れたかと中也が後ろを振り向いた瞬間。
「 ん。 ほら、行ってらっしゃい。 」
口に少しの暖かさを感じた。
その後はすぐにAが中也の背中をグイグイと押して玄関から出すのには成功したが、お互いに朝の出来事のせいで仕事が身につかないのである。
「 ( 嗚呼… 何やってんだ私ってば… ) 」
中原「 不意打ちは駄目だろ。
くそッ、覚えてろ… 」
立原「 なァ、なんか中也さん物騒なこと云ってんだけど。 」
樋口「 何時もの事では。 」
立原「 … それもそうだな。 」
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まりな - 面白かったです!これからも頑張ってください! (2018年1月27日 11時) (レス) id: 432d65a945 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸水素なとりうむ(プロフ) - 凄く続きが気になります!!更新ファイトです! (2017年12月24日 2時) (レス) id: aeb5ce3320 (このIDを非表示/違反報告)
毛糸 - 第一次反抗期戦争の方からきました!! とても面白かったです!!これからも更新頑張ってください!( ´∀`) (2017年12月9日 19時) (レス) id: 1ec397df0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カスミ | 作成日時:2017年12月7日 19時