年に一度、人生に何度も［N HBD!!］ (ページ8)

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忘れんぼうな君へ１ページ8

「ねぇ、和くん」
「なに？」
「今年のクリスマスのことなんだけど、予約してくれた？」
「え、そんなこと話したっけ」

彼はいつもそう。

約束事も、何もかも忘れてしまう。
記憶がなくなるんじゃない。
忘れんぼうなだけ。

……でも、でも。
クリスマスデートぐらい覚えてて欲しかった。
だって、かずくんが言ったんだよ！

めずらしく、
「クリスマス予定ある？デートしよっか」って。

「……もう！和くん忘れたの？」
「あは、ごめんね」
「笑いごとじゃないんだから！」
「ごめんって、予約しとくから」
「ちゃんとしてね？」
「はいはい」
「もー」
「でも、和くんのこういうところかわいいでしょ？」
「…自分でいうこと？」

「Aが思ってること言っただけ」

「かわいいけど！」

「ほら、ね？」

そういって口を塞がれる。

…別に嫌いじゃない。
寧ろ、好き。こんなとこも、好き。
だから、付き合ってるの。

忘れんぼうの和くんが好きだから。
忘れんぼうでも和くんが好きだから。

結局、クリスマスデートはしなかった。

いいの、別に。
いつもそうだから。

かずくんは仕事で帰ってこない。
大変なんだね、和くん。

「サンタの帽子被って欲しいなあ」って和くんが言ったから、1人でサンタの帽子をかぶって。
ばかみたい。
サンタの帽子をがっ、と脱いで、ゴミ箱に捨てる。
しばらく、それを見つめた。

……クリスマスだから、サンタクロースに頼んでみよっかなぁ。
一生に一度のお願い。

わたしの和くんを返してください。

……なんてね、冗談。

年末だと言うのに、和くんは帰ってこない日が続いた。
いつもは、こんなことなかったのに。
年末年始は帰ってきたのに、ちゃんと。

「遅かったね」

と、皮肉を含めていうと、

「仕事だよ、ごめんね」

そう言って頭をなでなでしてくれる。

仕事なんだ、忙しいんだね。
頑張ってね。

正月は休みを貰った、と言いながら和くんがわたしを抱きしめる。

こんな調子だから、離れられないんだよ。

和くん、大好き。