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第十一話 ページ14

あのデジャヴに襲われた言葉の辺りからだろうか、どこからか昆虫の発する不快な羽音を耳にした。己でも顔から血の気が引くのが分かる。

「難波さん?なんだか顔色が悪いけどどうしたの?」

「玉田……頼む、吾の「なあ、もういいだろ。帰らせてくれよ」…確認だ。最後に羽鳥の行方を教えてくれ。聞いたら解放してやろう」

吾の予測通りならきっと…蜜山は先程と打って変わり眉間に皺を寄せているが、同時に同情するような調子で首を振り言った。

「僕は忠告したよ。ちゃんと、ね。あそこは寒くなるかもしれないけどまあ、仕方ないよ。もっと悪いこともあるかもね?」

「あれ?さっき知らないって「もう話しただろ。さっさと帰ってくれ!」っ!?いきなりキレることはないだろ!」

「黙れ!もう奢らなくていいからとっとと消えてくれよ!さっきから新しい友達に呼ばれてるって言ってるだろ!」

突如情緒が不安定になったかの如き怒りようで蜜山は困惑する皆に目もくれずその場から立ち去ってしまった……机に数枚の札を叩きつけて。

「蜜山さん、途中から豹変はしたけど…どうしたんだろう。怨霊に取り憑かれていた訳じゃないみたいだし」

「とりあえず後つけてみようか?」

確かに彼の背後には怨念を帯びた物はなかった。だが吾には…否、我等には分かる。側にいた主が急かすように衣の裾を引っ張る。

「あー小間…否、皆に一つ策がある。暫し待っててくれ」

「え、ちょっと」などと吾の手を掴もうとする誰かの手を逆に振り払い鞄を持ち店から離脱、雑踏に消滅寸前の蜜山の追跡を開始した。

自由奔放なのは百も承知。しかし予測の通りならば折角の未来ある者達をこれに巻き込むなど吾が許せない。

数分ともしない内に蜜山は薄暗い路地裏に迷いなく歩き途中で立ち止まった。奥は不思議と見えない。今のところ蜜山はこちらに気づいていなそうだ。

奥の闇からは蜜山に向けてだろう、羽音のような不気味極まりない低い声がぼそぼそと聞こえる。

「今夜………に……」

「ああ、分かった」

ああ、羽音が鳴り止まない。それどころか音量は増していた。頭に響くそれが嫌悪感を募らせる。

物音をたてないように鞄からある物を取り出し、音源がいるだろう闇に向ける…大丈夫、ちゃんと当てる。役立たずじゃない。大丈夫。

向こうから此方へ何かが動いた気がした…その刹那、乾いた破裂音が路地裏中に響き。

「え…はっ?」

「やはり銃で一撃は無謀か」

不快だった羽音が一瞬だけ途切れた。

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作者名:小鳥遊 x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年12月30日 19時

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