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『ふぅ……』
けが人がいないことを確認し、近くの桜の木の下に座り一息ついていた。
ー___ー
ー____!!ー
『…………(あぁ……また……)』
思い出せそうで思い出せないぼんやりとした記憶が頭の中に流れてきて、桜の木の下でぼんやりと上を眺めていた。
それに気がついた神楽が声をかけた。
「えり!!えりもこっち来るネ!」
『……』
「あの状態のえりに話しかけても無駄だぜ、チャイナ」
「何してるんですか?えりさんは……」
「…俺にもわからねェ。わかんのは……アイツの無くした記憶に桜が関係してやがるんじゃねェかってことでさァ。」
「無くした記憶……?」
気になったのか新八が反応すると、お妙に殴られ地面に伏せてたはずの近藤が起き上がり、話した。
「実はな……俺から言うのもあれだが…えりちゃんには昔の記憶がないみたいなんだ。」
「「「え!?」」」
「昔の記憶、と言っても俺らと武州に会う前だから、8歳より前の記憶だな。それ以降は俺らといるからあるんだが……
そのせいか、両親についてなんにも分からなくてな……」
みんなの目線は空を仰ぎ、いつものえりとは思えないくらいぼんやりとしているえりの方に向いていた。
桜のように綺麗な桃色の瞳にも少し陰りがあり今にも消えてしまいそうな雰囲気をかもちだしていた。
沖田はえりの隣に座り、同じように空を見上げた。
『…………総悟…………?』
「……ん。」
『…………また、何か、思い出せそうで…思い出せない。』
「……」
『でも……』
「?」
『こうやって…………とっても賑やかだったような……そんな気がする……』
ギャアギャイと再び騒ぎ出した近藤達を見て、えりはやっといつもの笑顔に戻った。
「わん!!」
『!』
「定春!!」
唐突に定春が神楽の横から走り出し、新八が自身の経験から焦ったように声をあげたが、定春はえりの前で止まり、じっとえりを見つめていた。
えり自身も少し驚いたようにしていたが、ニコッと笑い定春の首元を撫でた。
『……定春と言うのね、私は松田えり。よろしくね。』
「クゥーン」
定春はえりの頭を噛むことなく大人しく撫でられており、それを見た神楽達は驚いたようにしていた。
「定春が……噛まなかった…?」
「めっさ懐いてるアルか……?」
「ワフ!」
『わっ…』
えりの袴の袖をぐいっと神楽達の方へ引っ張った。
「行きやしょうぜ。えり。」
『…じゃあ、お邪魔させてもらおうかな?』
えりは隣に立つ総悟と共に神楽達の所へと足を進めた。
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作者名:Tyina | 作成日時:2022年5月29日 23時