安倍晴明の血を引き継ぐ者

無為転変 ページ39

『灰原さんと合流、ですか?』
「はい。明日の夕方からです。」
『でも、どうしてそんな唐突に…』
「詳しいことは後ほど、七海さんが連絡を送るということだそうです。」
『そうですか……わざわざありがとうございます。』

美咲からの電話を切ると、開いていた書類ファイルに栞を挟んで棚に戻した。

部屋から出るとちょうど特訓から帰ってきた釘崎とすれ違った。

『野薔薇ちゃん、お疲れ様。』
「どこか行くの?」
『1度、夏油先生のところに行こうと思って。
恵は?』
「伏黒なら夏油先生と一緒に校舎戻ってった。」
『そっか、ありがとう。野薔薇ちゃん。
あ、寮の冷蔵庫に入ってるアイス食べてもいいよ。』

少し言葉をかわすと、Aは校舎へ向かっていった。

「……。」
「…!!……!!……!!!!!!」
『(あれ、この声……、)』
「だ･か･ら!!補助監督さんを困らせんなって言ってんだよ!!!クソ親父!!!!」
「別に出せばいいだろ。」
「期限があるんだよ!!さっさと書け!!」
『(やっぱりだ……。)こんにちは。』

Aがそこに行くと、ピタリと声が止まった。

壁によりかかり観戦していた夏油が「や、A。」と手を上げた。

「…お久しぶりです。A様。うちのバカ息子がお世話になってます。」
「(ギロッ)」

伏黒の父親、伏黒甚爾が思いっきり伏黒に睨まれていた。

話の内容からして、甚爾がまた報告書を出さずに補助監督を困らせているのだろう…

『甚爾さん、あまりにも報告書を出さないと五条先生と同じ状況になってしまいますよ……?』
「……………明日までには書いてくる。んで提出するよ。じゃあな。恵。」
「さっさと帰れ、クソ親父。」

深いため息をついたあとそう言った甚爾はヒラヒラと手を振って帰って行った。

「それで?なんでAはここに?」
『明日の夕方、灰原さんと落ち合わせて、七海さんと出張任務があるって連絡が来ました。』
「……またAの出張か……?」
『うん、ごめんね。全然一緒にいられなくて……』
「気にすんな。」
「さっき補助監督さんから連絡があったから、Aの方にも七海からの連絡がそろそろ来るんじゃないかい?」

夏油がそう言ったタイミングでメールが受信された。

『今来ました。』
「それじゃあ、俺は戻ります。禅院先輩を待たせてるので。」
『特訓?』
「あぁ。」
『頑張ってね。時間あったら見に行くから。』

伏黒を見送ると、Aはメールを開き夏油と共に、万が一のことを考え情報に誤りがないか確認した。

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