この手の隙間からこぼれ落ちないように【刀剣乱舞/だきしめて】 (ページ8)

今日:8 hit、昨日:8 hit、合計:5,910 hit

秋田藤四郎ページ8

「おお！主君、凄いですよ！」

自分の主君に元気に話しかけてくる。今は紙飛行機を折って、飛ばしている。

ふわんと変な軌道で、庭まで飛んでいく。

「わあっ！最高記録です！印をつけてきますね！」

ぱあっと表情を明るくして、縁側からさっと降りて印をつけて帰ってくる。

「僕も主君の記録を越えられるようにしなきゃ！」

にこにこしながら、また新しい紙飛行機を折っている。

そんなことをしたのがつい先日のように思える。僕の練度もいよいよ上限になって、極修行へと旅立ってから1日目。

修行をする前に、好きなところへ寄ってもいいと聞いたので、前の主君の元へとやってきた。少しでも会えたら、外の世界のことを話したかった。今の主君とやったこと、初めて知ったこと。空があんなに広くて大きくて、青いこと。

だけど、大きな門は固く閉じられていて、開きそうもない。どうにか前の主君に会えないかと粘ってみる。

それから、ずっとお屋敷へ入れないか機会をうかがってみたけれど、警備が厳しくて無理だった。そろそろ潮時だと思ったので、前に主君に教えて貰った紙飛行機に紅葉を挟んであの人のもとへ飛ばした。

これで歴史改変になるのなら潔く折れよう、と決意して。

それで、もし生きて帰れて、主君のお傍にいられるのなら、全身全霊を掛けて主君を守ろうと思って、主君への手紙へ綴った。

強くなるための修行を終えて、いよいよ主君の元へ帰る時が来た。どんな顔をして会おうか。主君にはどんな話をしようか。話すことがたくさんある。

どきどきしながら、主君のいる本丸へと足を踏み出した。

主君の姿を見つけたら、安心して言おうと思っていたことも忘れてしまった。

だけど、心からの笑顔を浮かべて言う。

｢すごい！どこへも飛んでいけそうです｣

おかえり！と主君が飛びついてくる。そんな主君に、僕も｢ただいま帰りました｣と抱きつくのだ。

そう、どこまでだってお守り致しますよ！主君！僕なら、主君が審神者をやめても、亡くなっても着いてお守りします！たとえ、地獄へ落ちてでも。