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「……A」
『はい？』
突然木吉に呼び止められたAは顔を上げた。
もうすぐ試合が終わるこの瞬間で。
周りには聞こえないような、小さな声で。
「オレは大丈夫だから。みんなには少し黙っておいてくれ」
『そんなこと言われなくても、オレは木吉さんの意思を尊重しますよ。今は、ね』
「はは、ありがとう」
大凡誰も、気付いていない。
Aを除いては。
先の動き、木吉は確実に膝に違和感を覚えていた。
そうでなければ彼が外すわけがなかった。
Aに声をかけたのはきっと、彼が自分と似ていたからだろう。
不利を抱えているところが同じだったからだろう。
それに、人のことを良く見ているAが気付かないはずがないと思ったこともあったかも知れない。
『何とかなりますよ、きっと』
「あぁ、そうだな」
曖昧な言葉だったのに、Aがそれを言うと、本当にそうなような気がした。
仮に失敗してしまったって、仲間がフォローしてくれる。
不安に思うことなど、一つもなかった。
一投目。
木吉の手から離れたそれはリングに吸い込まれるように綺麗な弧を描いた。
そして、運命の二投目。
ゴッと音を立ててボールが跳ね返る。
皆が死ぬ気で手を伸ばしていた。
火神と緑間が最後の張り合いを見せる。
が、聞こえたのはブザーの音だった。
104 対 104。
両校互角、引き分け。
ハイタッチを全身で受けた木吉は責め立てられたと勘違いするが、皆の声を聞いて安心する。
誰も不満など、感じていなかった。
『何とかなったでしょう？ 木吉さん』
「ああホント、オマエの言う通りだったよ」
『オレもあなたのおかげだと思ってます』
ありがとうございました、と笑うAの顔があまりにも穏やかで、木吉も優しく笑い返した。
誰のミスでもないし、手を抜いたわけでもない。
その上、負けたわけでもない。
ならば本当に、不満などないのだ。
挨拶を終えて、誠凛 対 秀徳の二度目の激突は幕を下ろす。
甲乙のつけられない、最高の試合だった。
かと言って、不満はないが満足したわけではない。
決着は、必ず白黒のつくウィンターカップへと持ち越された。
『ねえ、テツヤ』
「何ですか？」
『ようやくうまく、噛み合いそうだ』
残す試合はあと一つ。
それに勝つことができれば、晴れてウィンターカップ出場が決まる。
もうすぐ、Aが最も懸念していた試合が始まる。
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ちさ子(プロフ) - 明後日打ったんで誤字になってて恥ずかしいです〜！！こちらこそレスありがとうございます！ (2019年12月19日 9時) (
レス) id: 62cdfd78f2 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん、(プロフ) - ちさ子さん» あわわわコメントありがとうございます！！ありがたいお言葉で頑張れます！ (2019年12月18日 16時) (レス) id: 97d132fcbf (このIDを非表示/違反報告)
ちさ子(プロフ) - すごか面白くて、一気に読みました！！続き楽しみすぎて眠れないです笑笑 (2019年12月18日 3時) (レス) id: 62cdfd78f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽん、 | 作成日時：2019年6月1日 0時
