【文スト】裏を返せば全て善意 (ページ3)

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平和で長閑で良い天気。
半ば無理やり連れ出された街に、そんなこと思った。

数歩前を歩く彼女の腰には刀、大鬼丸が構えている。
鞘の中の刀身は、もう20センチ程しか残っていなかったけれど。

「情報収集って具体的には何をするんですか？」

『何だろうねぇ』

「えぇ……また適当な……」

まず第一に、住民を怖がらせるような情報を口にしてはいけない。
何せ相手が奪うのは心臓なのだ。
それを耳にすればみなが恐怖してしまうだろう。

でも聞き込み調査は基本中の基本。
特務課が依頼してくるような内容だから、一般市民が何かを知っている可能性は小さいのだが。

「やっぱり帰って太宰さん達にもう一度お願いしてみましょうよ」

『いや、今のままじゃ駄目』

「え？どういうことですか？」

『私たちが何かを得ないと助けてくれないよ』

ぽん、ぽん、と自分の頭にクエスチョンマークが浮かぶ気分。
まあ、この人のことは基本的にいつも理解できないのだけど。

わかっていないことを察したのか、立ち止まったAさんは振り返って僕の顔を見た。
少しだけ、ドキリとしたことは秘密だ。

『脳筋でしょ？私。と、敦くん』

「脳筋……？え？僕も……まぁ、うん、どうでしょう」

『これは試練さね。今は忙しい太宰さんと、今は乗り気じゃない乱歩さんからの』

何かを掴みさえすれば助けてくれる、と言う彼女にそういうものかと思った。
実際のところ彼女が言うのだからそうなのだろう。

武装探偵社、色々と難しい。

「でも確かに、頼りっぱなしっていうのは駄目かもしれませんね」

『そうでしょう？探偵社なんだもの、探偵らしく！なんてね！』

「あはは、Aさんは命かかってるの忘れてませんよね？」

『忘れないよ、死にたくないもん。まだ鏡花ちゃんとご飯食べに行けてないし、何より太宰さんにお金返してもらってないし』

何のお金だろう、と思わなくもないが喫茶店をツケで利用している太宰さんを思い出して口を閉じる。
多分そういった関連だろうな、と思わなくもない。

『それに、私はまだ、敦くんに入社祝いを渡せてないし』

あはは！と笑う彼女に驚いた。
そういうことはあまり気にしない人だと思っていたけど、そうでもないらしい。

意外と常識人だったりして。

『あ！あとはね』

「あとは？」

『大鬼丸の仇を取らないと死ねないよ！』

「はは！そうですよね！」

司馬A。
やっぱり彼女はこうでなくては、と思う。