第百刀 ： 帰還 ページ21
こうしてゆっくりと、移動する周囲を見たのははじめてだった。
景色そのものはまるで神の世そのもので、
美しいものだけを、寄り集めたようだった。
―――美しい池、美しい花、美しい自然、美しい空。
無限に広がるそれらを少しの間見つめて、
ゆるやかに切りひらかれる眼前へと目を向けた。
俺は、見慣れた神社の社に降り立った。
「・・あぁ、」
ここが、俺のいた世界だ。
見渡した周囲の景色は、あの日と何一つかわらない。
静かな、静かな夜だ。
相変わらず、家には誰もいないのだろう。
夜勤にでかけ、夜の仕事で働く母親。
そんな両親のストレス発散に、
今度は動物園にでも連れて行かれるのかな。
それとも、癒されるために、植物園かもしれない。
「・・・左文字さん、」
社の奥。
あの日のまま、置かれた溶液に鵜丸兼定を放り込む。
―――あなたには申し訳なかったと、心のどこかで謝った自分がいた。
そして手にとる、白雪のような刀身。
―――もう一度、左文字さんに会いたいと願った。
愚かな人間の愚かな願いだとわかっていた。
手を放すとき、思い出したのはあの時の、左文字の笑顔。
―――貴方を愛した私を、どうか笑わないでください
「笑わないよ・・俺だって、あなたのことが好きだった」
一度だけこぼれた雫をそっと拭う。
だってここには、拭ってくれるものなどいないのだから。
―――そうして思い出す。
これは、俺自身の手で鍛刀した、はじめての刀になるのかと。
こんのすけも、あの日見た妖精もいない。
俺だけの手でうみだすものになるのだと。
俺が何かをうみだすだなんて、―――笑った。
ごぽり。
浮いてきたそれに目線を向ける。
茎(なかご)を手にし、溶液から引き出す。
そこにあったのは、見慣れた白雪の刀身。
そっとその刀身に触れた。
鍔(つば)をそえ、柄(つか)をあて、そして鞘を傍に。
手にした時だった。
あの時と同じ。
光と共に桜が舞う。
「・・・あ、」
"彼"はそこにいた。
「・・・――あなたは？」
紡がれた言葉に涙しても
「左文字さん・・！」
駆け寄った彼が、その腕で抱きとめてくれなくとも、
「・・あなたは、――私を、知っているのですか・・？」
震える体を、戸惑いつつも、支えてくれたから。
「・・何故、泣いておられるのです」
不思議そうに、問いかけたその声に。
「――あなたが、傍にいてくれるから」
俺はその言葉をつげることが出来た。
―――おかえりなさい。
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遊藍 - 蒼さん» ありがとうございます。燭台切さんの執念、だなんて素敵ですね(笑)・・青江さんと左文字さんにも注目して頂いて・・こんな遊藍めの作品をご閲覧頂き、ありがとうございます！ (2015年11月8日 0時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 今までヤンデレって好きじゃなかったんですよね。自分中心な上に重すぎるというか…しかしこの三日月は違和感ないです、笑。刀剣乱舞の画像で目が離せなくなる美貌を持つ彼が抱える闇に納得するくらいです。燭台切の執念、左文字と青江も良かったです。 (2015年11月5日 22時) (レス) id: 98f743b05f (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 三条朔月さん» そうです、「つよぉい！」を強調する黒い兼定さん。カカカ殿は、一度の出陣で2〜3振ひろってくる、なんて、よくあります・・うう・・・鍛刀で出せる刀剣で、残っているのは、狐だけなのになぁ・・やっぱり第二部隊で、5−3いってもらえるように頑張りますか・・ね・・・ (2015年9月26日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
三条朔月(プロフ) - かっこよくて強いか (2015年9月24日 23時) (レス) id: 04413a2bd7 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 大変・・！(そしてその気持ちもわかる・・)遊藍の場合、五面は基本カカカ殿です(涙)たまにだぬぽんか和泉守さん・・ (2015年9月24日 22時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年8月10日 1時
