第九十四刀 ： 悪辣 ページ15
人間は愚かで扱いやすかった。
ひとことでよかった。
『お前など、所詮は人間だ』
たったひとことそう言い落せば、
俺達に負けた男は、
意地になって必死になって、
死に物狂いで鵜丸兼定を探すと。
―――男は予想通りの行動をとってくれた。
見つけ出してくれた拠点―――薩摩。
それだけでよかった。
俺が欲したのは場所の情報と、周囲を囲う修正主義者。
――――奴らをすべて、折ることさえできればよかったのだ。
＊
嵐のような風が吹く。
木の枝は叩きつけるように、
繰り返し本丸のガラスを殴りつける。
「・・嵐か・・」
「・・嫌な風ですね・・」
窓の外は、風の音とは正反対に、穏やかそうな日差しを向けている。
左文字とともに昼餉を支度して、そしてそろって呟いた。
三日月は本丸の中をうろついているのだろう。
出来るだけ、話したくはない。
燭台切に畑をまかせ、宗三には馬を、
長谷部と青江に手合わせをさせて、
―――離れでは備州が、
今日のおやつを二振りとつついているのだろう。
昨日とはうって変わった天候以外、
何一つとして、何も変わらない日。
「主！」
がらり、厨の戸がひらく。
「本丸の散歩は飽きた！
主よ、俺を城下まで連れだしてくれ！」
顔を覗かせた三日月はずんずんと中央まで進み、
霞の正面に立った。
「城下って、・・何言って・・」
相変わらず視線をあわせることはせず、
そして茫然と彼を見つめる。
「・・本丸の中だけではつまらん。
外で、花でも見ながら、また主と食事をとりたいのだ」
むぅ、と口先をとがらせる。
足を動かす素振りのない霞に、
しびれをきらした三日月が歩み寄った。
―――左文字は、眉を寄せて様子をうかがう。
しかし右手を柄(つか)に添えているあたり、
時と場合によってはばっさりと、とでも考えているのか。
「さぁ、まいろうぞ！」
ふっと微笑んで、霞の手首をぐっと掴む。
「ちょっと、三日月さん、」
聞いて返そうとした時だった。
「!!!」
ざわりと、背筋が粟立つ。
寒気がした。
「・・！ 主、」
『審神者殿!!!!』
左文字の一声と、少し遅れたこんのすけの声。
厨の机に姿を現したこんのすけ。
その表情には、見て取れるほどに危機迫るものを感じた。
「主、こちらへ！」
まっさきに三日月を突き飛ばし、
腕を引き離した後、左文字が空いた腕をとった。
「・・え？」
すれ違う直前、三日月の口がひらいていた。
――――なんだ、もうきたのか。
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遊藍 - 蒼さん» ありがとうございます。燭台切さんの執念、だなんて素敵ですね(笑)・・青江さんと左文字さんにも注目して頂いて・・こんな遊藍めの作品をご閲覧頂き、ありがとうございます！ (2015年11月8日 0時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 今までヤンデレって好きじゃなかったんですよね。自分中心な上に重すぎるというか…しかしこの三日月は違和感ないです、笑。刀剣乱舞の画像で目が離せなくなる美貌を持つ彼が抱える闇に納得するくらいです。燭台切の執念、左文字と青江も良かったです。 (2015年11月5日 22時) (レス) id: 98f743b05f (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 三条朔月さん» そうです、「つよぉい！」を強調する黒い兼定さん。カカカ殿は、一度の出陣で2〜3振ひろってくる、なんて、よくあります・・うう・・・鍛刀で出せる刀剣で、残っているのは、狐だけなのになぁ・・やっぱり第二部隊で、5−3いってもらえるように頑張りますか・・ね・・・ (2015年9月26日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
三条朔月(プロフ) - かっこよくて強いか (2015年9月24日 23時) (レス) id: 04413a2bd7 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 大変・・！(そしてその気持ちもわかる・・)遊藍の場合、五面は基本カカカ殿です(涙)たまにだぬぽんか和泉守さん・・ (2015年9月24日 22時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年8月10日 1時
