第四十五桂 ： 新参者の愚かな日常 ページ48
はじめて彼らを見たとき
どことなく異常な、そんな気はした。
だけれど彼らは別に苦しんでいるようには見えなくて
僕にとってここは
それなりにいい場所だった。
―――研修生、と呼ばれる者たちが現れるまで。
「三日月宗近という刀は美しいな」
「三日月こそ至高だよ・・俺達にとっては最高の刀だ」
「彼女、どうやら刀剣を手入れしていないらしい・・」
「まさかとは思ったが、彼女は三日月ばかり・・」
みんな、みんな、あらゆるすべてが同じだった。
口をそろえて三日月を褒め称えて、―――主である彼女の話をこぼす。
信じられなかった。
しかし古株であるはずのみんなは、あっという間に信用していて。
確かに彼女は部屋の奥から出てこないことが多かった。
三日月と夜伽をかわしていることも知っていた。
「・・そんな、まさか・・」
それは徐々に、僕の心をむしばんだ。
「あぁ、けんしゅうせい、という奴らなら、
もう戻ってはこぬよ」
それは何人目だったか。
美しく優雅に、三日月は口元を隠して、
―――しかし確実に笑ってそう言った。
あらゆるすべてが同じだった。
あらゆる刀剣が、同じだった。
みんな、みんな、
口を揃えて
「さすが、三日月だ」
「三日月さまがいてよかった」
主でさえも。
「・・三日月、あなたがいてよかった」
――そしてそれは
「・・うん、そうだね、さすがだ」
ついには僕の心も蝕んだ。
「研修生、研修生――・・」
崩壊なんてあっという間だった。
――恐らく、
もう彼らは彼女は
僕だって
―――三日月なしではいきていけはしないのに。
「顔を見せてくれなくなった」
「俺の膳は気に入らぬようだった」
こぼれることばは、おなじだった。
「光忠、わかっておろう。
何故、わざわざあのように媚をうる」
「・・っちがう、僕は、ただ・・」
僕は、ただ彼に
僕が作った膳をみて、――見て、なんだって？
「・・もうよいわ」
あぁ、あぁ、まってくれ
「三日月、・・っ」
おこらないでくれ
僕が悪かった、僕が、間違っていたから、僕が、
「許してくれ三日月っ、」
僕はただつくったものを
――誰か、に、褒めて欲しかっただけ、なんだ。
主でさえも、何も言ってはくれなくなってしまったから、せめて、――
「三日月・・・」
離れた背中を追いかけることは出来なかった。
「僕だって、彼と話してみたいと思っただけなんだ、・・・」
それが何を意味しているのか
愚かな僕にはわからない。
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・！いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます！ (2015年12月7日 7時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・！ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね！ありがとうございます！ (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています！これからも頑張ってください！ (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます！ (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました！三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年9月25日 22時
