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第二十四桂 : 異質なのは、だれ? ページ27

眉を寄せた三日月は、一期の謝罪を受け入れる。
潤んだようにすら見えた瞳は、いつもの色にかえる。

「・・私、などが口を出していいのかはわかりかねます。
しかし三日月殿、あの研修生も、いつ主殿に牙を剥くともしれません。
今のうちにこの本丸所属が一番長い貴方の気をひいておいて、
確率した地位を得た時、確実な立場で彼女を追い出す・・」

いつも、いつだって、どの人間もそうではなかったか。
言いつのる一期一振は必死だった。

この妖艶な刀を、この美しい男を、
―――この恐ろしい神を、敵に回すわけにはいかない。

「・・なんだ、お主も同じか」
「・・え?」
「あの研修生を追い出す算段を立てて欲しいのだろう?」

目の前の付喪神は美しく微笑む。
――そして一期は、
―― 一期もまた、その笑みに、促されるように頷いた。

「あの男は悪魔です。
いいえ、主殿以外の人間など、誰であれ同じだ」

嫌悪感を隠しもしない一期に対し、
三日月はふわり、やわらかく微笑んだ。

「・・そうか、そうであろうな。
そうだな、俺に任せておけばいいのだ。
お主らは、何も気に掛ける必要など、ないのだから」

――そうであろう?
のう、一期一振。お主も同じだ。
この本丸にいる他の刀剣らと、同じことよ。

「・・はい」

――だから、一期一振。

余計なことなど考えるでないぞ?

(俺は、今の状況を、俺だけで、楽しみたいのだから)

誰にも邪魔はさせぬと、意図せずして歪んだ口元を、袖口で隠した。


「のう、一期よ。
ひとつ、頼みがあるのだが」
「・・はい?」


三日月は一期に微笑んだ。
柔らかく、そして悪意など微塵もうかがうことは出来ない、


「 小狐丸と出陣してはくれまいか? 」


ただただ、妖艶な眼差しだけを残して。



「・・お任せください」



この時
一期一振でさえ

心の底から
この美しい神の役に立ちたいと、そう願ってしまった。


***



研修に来て、わざわざ、毎回毎回城下に降りるのも、どうかと思う。

「・・仕方がないんだけどね・・うん・・」

しょぼんと眉尻をさげ、惣菜屋をまわる。

確か、小狐丸は油揚げが好物だといっていた。
――青江には、まあ、和菓子でも買っていってやろうと思う。

「これは、いかがです?」

左文字の指し示す先には緑黄色野菜が練り込まれた羊羹があった。
―――かなりの変わり種だと思う。数秒と悩まずに、青江に買ってやった。


両手に大きくはない袋をさげて、桜夜らは本丸へと戻った。

第二十五桂 : ひび→←第二十三桂 : 異質



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設定タグ:二次創作 , 刀剣乱舞 , 腐・恋愛/男審神者主   
作品ジャンル:その他
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・!いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます! (2015年12月7日 7時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・!ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね!ありがとうございます! (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています!これからも頑張ってください! (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます! (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました!三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:遊藍 | 作成日時:2015年9月25日 22時

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