第十四桂 ： 一時収束(強引) ページ17
―――小狐丸は動かなかった。
動いたのは、桜夜である。
「・・左文字さん、行こう。
他の刀剣たちの話を聞きたい」
「・・はい」
三日月の表情を伺うことなく、
桜夜は左文字に声をかけて小狐丸の背後から出る。
「小狐丸、よかったらみんなのことを教えてくれ。
さすがになんの前知識もないまま声をかけるのは困るから」
「はい、審神者さま！」
張りつめていた空気をほどき、
小狐丸は努めて明るく、元気よく返答した。
二人のあとをちょこちょことついていく。
「！ 待て！
研修生、話なら俺がしようぞ！」
俺の方が所属年数が長いのだ、と、
抜け出した桜夜へと腕を伸ばす。
それは左文字によって遮られ、桜夜は、
前に小狐丸、背後に左文字をあわせ、
三日月の声に振り返ることも答えることもなく、広間の端へと消えた。
「・・研修生、俺の話を、」
追いつかない思考と共に、見送るだけの三日月の側へ、
群れから抜け出したミハナが寄ってくる。
「あら。どうかしたの、三日月？
ぼうっとして？」
「・・・」
問いかけるミハナの腕を軽く握る。
「審神者」
「・・あら、なぁに？」
うっとりと視線を投げかけてくるミハナ。
――三日月は、今度こそ、笑みを抑えることが出来なかった。
「部屋へいこう」
失笑とともに投げられた言葉に、ミハナはなんの疑いもなく頷いた。
(・・俺が、話をしようといったのに)
―――応えのないもの。
そのわだかまりは、徐々に三日月を支配していく。
(俺が、おかしいのではない。
やはり、あの研修生が、おかしいのだ)
酔ったように虚ろな眼差しでついてくる「審神者」を横目にとらえて、
三日月宗近はもう一度笑った。
――だって、俺を相手にするのなら
これが普通なのだろう？
＊
「・・主」
「ん？」
「奇怪な刀剣ですね・・あの、三日月宗近というものは」
「・・？ そうなのかい？」
あまりにも純粋な桜夜は何一つ、しらない。
「あの場を収めて頂き助かりました。
私では、おそらく三日月には太刀打ちできませぬ」
「・・ま、最上級刀剣らしいしね・・」
広間の端、桜夜の左右に小狐丸、左文字がならぶ。
小狐丸は、しかし困ったように、眉尻をさげて謝った。
「・・やはり私はここへ来たばかりなのです。
教えられることなど、ないに等しゅうございましょう」
そこまで口にして、はっと顔を上げた。
「・・そうだ、中立な立場成る刀剣ならば、
一振り、心当たりがございます！」
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・！いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます！ (2015年12月7日 7時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・！ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね！ありがとうございます！ (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています！これからも頑張ってください！ (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます！ (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました！三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年9月25日 22時
