検索窓
今日:2,053 hit、昨日:5,529 hit、合計:805,661 hit

26.しおり 安室side ページ27

「それでその時お父さんがウェイトレスさんに絡んだせいで、お母さんが怒って帰っちゃったのよ!!」

『あーそれは小五郎さんが悪いですね。』

「Aちゃんまで…」

蘭さんや毛利先生と談笑する彼女の笑顔が、あの頃のものとそっくりで魅入ってしまう。

「…やはり」

さっきの蘭さんの話が本当だとしたら、彼女はやはりあの時イギリスに転校した彼女で間違いない。
あの時、“俺たち”は小6で彼女は一学年下の小5だったから。

それにしても、偶然昨日再会したのには驚いた。
……夢を、叶えたんだな。


【俺は立派な警察官になる!】

【俺も!絶対に立派な警察官になるんだ!】

【私はお父さんみたいなすごいお医者さんになる!】


Aはピンク、”俺”は青、彼は緑のクローバーのしおり。
それぞれの色に映えるクローバーの濃い緑が綺麗だった。
そのしおりを、3人で交換したのを覚えている。

…再会した時に、お互い夢を叶えたその時に、また交換しようという約束も覚えている。

でも、今はそれが叶わない。
今の“僕”は安室透だから。

『小五郎さん?お酒もほどほどにしないと身体にも悪いですよ?』

そう言って笑う彼女は変わっていない。
でもよかった。少なくとも、自分の事を忘れないでいてくれた。
あのしおりも、まだ持っていてくれてるんだな。


【もし日本に戻ってきたら、その時は……!!】


転校する前日、自分の想いを伝えていたらどうなっていただろうか。
彼女にとって“俺”はきっと仲の良かった友達。
あの言葉の続きを言っていたら、きっと困らせていただろう。

そう言えば、2人でまた「あの景色」を見ようと約束をしたこともあったな。

「……無理な約束しかしていないな…。」

それでも、これらの約束があるから頑張れた。
もしこの再会を運命と呼ぶなら、あの約束にも、意味があったと思ってもいいだろうか。

「安室くん!会計頼む!」

「っあ、はーい!」

毛利先生に呼ばれてレジに向かう。
チラリと彼女を盗み見れば、パチリと視線が交差する。

『!…また、来ますね!』

「……えぇ、お待ちしております。」

この笑顔をまた正面から見られる日が来るとは思ってもみなかった。
いつか、“俺”の事を打ち明けられる時が来た時は、あの時の言葉の続きを伝えられればいいのに。

27.仕事→←25.ココア



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (200 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
768人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

YuasA(プロフ) - †NANA†さん» ご指摘ありがとうございます。先程訂正いたしました! (2022年1月7日 16時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ24で、「電話したもんだな」が「電話わしたもんだな」になっています。 (2022年1月7日 15時) (レス) @page24 id: 9dc612bbe9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:YuasA | 作成日時:2022年1月1日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。