十九話 織田作之助 ページ21
──太宰side──
『織田さんは、本当に優しくて。それに、信じられないくらい天然でした』
「それは私と居た時も同じだね」
『私、他にも何人かの子供たちを養ってる事は知ってたんですけど、私は会ったことないんですよ』
「別の場所で育った、ということかい?」
『はい、子供たちの中で異能力を使えるのは私だけでしたから。異能力を制御する練習も、織田さんが付き合ってくれたんです』
「なるほどね。確かに、制御しきれない状態で他の子と一緒にいるのは危ない」
『本当に、優しすぎるくらい優しいんです。その為だけに住む場所を用意してくれて、血も繋がっていない私の為に生活費まで出してくれて。』
『制御出来るようになってからも、練習したら少しずつ大きい物も消せるようになりました。本当に感謝してます。だから、
もっと大きくなったら、何倍も恩返ししようと思ってたのに………』
「………」
『まあ、連絡先も知らなかったので、今考えるとどうやって会うの?って話ですけど』
彼女が、無理に明るく話した。
「そういう時は、武装探偵社に依頼でもすればいいさ」
『そうですね!武装探偵社は頼もしいですから』
『あ、それから』
「なんだい?」
『織田さんに、言われた事があるんです。「もっと笑ったらどうだ」って。織田さんも全然笑わないのに。』
「そうだね、織田作も君と同じで、あまり表情には出ない方だ」
そう言うと、彼女は少し、本当に少しだが、嬉しそうな顔になった。織田作と同じと言われたのが嬉しいのだろうか。
『私って、感情的じゃないとか、感情の起伏が殆ど無いとか言われるんですけど、太宰さんはそう思わないんですね。"表情には出ない"って』
「それは君の目を見れば分かる。表情には出なくとも、目は感情豊かだ。」
『そうでしょうか?自分ではよく分かりません
……でも確かに、感情が無いわけじゃないんです。あまり人には伝わりませんけど。』
「人に自分の感情が伝わらないというのは、辛い?」
『辛くは無いですけど、少し寂しいとは思いますね。
でも、太宰さんには分かるみたいで嬉しいです。
私、太宰さんに会えて良かったです!』
「…其れは良かった。」
その時、内心少し嬉しいと思った。
こんな私でも、少女を喜ばせることができる。織田作には、到底追いつける気がしないけれど。
私にも、光を与える資格があるのかもしれない。
「私も、君に出会えて良かったよ」
50人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まくら枕 | 作成日時:2021年7月11日 17時