ー 第三特異点 序 ー ページ2
ーー酷い、嵐の夜だった。
船体は傾き、船首は宙を向いている。
今にも投げ出されそうな乗組員は、
ただ必死に、
己が身を守るべく掴まっている。
そんな中、彼女は、
彼らを無事に連れ出すため、
ただ向かってくる敵対者を屠る。
嵐の中、その船は無事、戦線を離脱した。
「この大渦の中逃げ延びたか・・・
英霊でもないのに、信じられんな」
*
この朝も、
相変わらずの体温のなか目を覚ました。
「お目覚めですか。マスター」
真横には見慣れた存在。
身体の両脇には慣れはじめた腕。
ーー彼は最近、
こちらを抱き抱えて眠るようになった。
勿論こちらが目を覚ました時、
彼はすでに覚醒しているのだけれど。
彼はこちらが目を覚ますまでは、
決してその腕を解かない。
(筋肉痛とかないんだろうか・・)
ーー筋肉痛。
英霊(サーヴァント)には、
あまりにも不釣り合いなその単語に笑った。
「あぁ。おはよう」
*
ーーカルデア管制室
カルデアスを前に、
ロマ二は頭を抱えていた。
「ーー72柱の魔神、ーー・・」
思い当たるものは一つしかなかったが、
しかし、
ロマ二・アーキマンは信じたくなかった。
「ーー大丈夫ですか、ロマ二さん」
そこへ、アルジュナを伴った秋が顔を出す。
「あ、あぁ、冬真君。すまない、おはよう」
気付いたロマ二は慌ててこちらへ振り返った。
ーー隈が酷い。
「・・おはようございます。
ロマ二さん、眠れなかったんですね」
指先を差し伸ばし、
ぐいぐいと彼の頰をこすった。
「あぁ、わかるかい?
いやいや、はは、わかるよね。すまない。
ーー二つ目の聖杯を無事に届けてくれたというのに、申し訳ないな」
「いえ。お気になさらず。
例の魔神柱について、ですね」
ロマ二は変わらず申し訳なさそうに頷いた。
「ーー思い当たる存在は一つしかないんだ。
古代イスラエルの王にして、
魔術世界、最大最高の召喚術師ーー・・」
深々とつかれたため息に、ロマ二の中の、
不確定事項以外のなんらかの疑念を感じた。
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作者名:遊藍 | 作成日時:2019年5月4日 21時