第三十三夜 ページ35
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そして、小走りで走ってくる二つの影。
「あー、あたしがリン、です。
ゆり様の、案内役を務めさせていただきます」
__出てきた人は、思っていたよりも綺麗な人だったものだから、意表をつかれた、と思った。
背は私よりも高くて、線の細い華奢な体つき。
小さい顔に、切れ長な目と赤い唇。
私が男なら、間違いなく彼女に惚れている。
いや、それよりも。
……この湯屋に来て間もない頃、つまりつい昨日、会ったことがある。
釜爺のところで、私に着物を持ってきてくれた人だ。
なるほど、昨日の"リン"とこの目の前にいる"リン"は同一人物か!
A「ごめんなさい、お仕事中に。
よろしくね」
なんとなく、「昨日会ったよね!きゃ〜運命〜」とか言っちゃいけない気がして、初対面のように振る舞った。
だって蛙男むちゃくちゃ怖そうだし。
蛙男はその様子を見て満足そうにして、リンさんに小声で指示のようなものを出していた。
_湯女や蛙に下手に出てはいけないよ。
舐められてしまうと仕事に響く。
_だからといって偉そうにしてもいけない、彼らがいるから私達は働けるんだ。
ハクの言葉を頭の中で唱えて、リンさんに手を差し出した。
彼女はおずおずと私の手を握り、握手を成立させた。
リン「仕事だなんて、大湯の掃除でしたから、全然構わない、です」
緊張しているのだろうか、辿々しい敬語が見た目によらず可愛らしい。
とりあえず、ハクが既に私に案内してくれた持ち場を説明する。
そしたらきっと、見るからに古株な彼女は他にどこを案内したらいいかくらい判断できるだろう。
そう期待しているからね!よろしくね!
リン「じゃああとは休憩室とか裏の俺達の場所ですね。
こちらです」
_ほら、やっぱり、期待通り。
彼女の背中を見つめながら、廊下を歩く。
彼女の堂々とした歩き方がハクに少し似ていて、私はくすりと笑った。
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ちゅん(プロフ) - 凄く素敵なお話ですね^_^続きが凄く気になります(^^) (2022年3月25日 23時) (レス) @page48 id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
猫 - 今更かもですが、私も続き気になります…。 (2018年11月16日 19時) (レス) id: 08a665f28f (このIDを非表示/違反報告)
れんらん(プロフ) - 更新お願いします! (2018年8月9日 19時) (レス) id: 0c5afdadd2 (このIDを非表示/違反報告)
KA☆SE☆I(プロフ) - 続きがめっちゃ気になります!更新頑張ってください! (2018年6月10日 19時) (レス) id: 34b5e9b2d8 (このIDを非表示/違反報告)
YuRa(プロフ) - ねこさん» 続く予定です!筆者の受験が終わりましたら、更新を多くしていきたいと思います! (2018年3月4日 14時) (レス) id: 16af3255b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:YuRa x他1人 | 作成日時:2016年11月27日 14時