第三十二夜 ページ34
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「ハク様、ハク様、湯婆婆様がお呼びです」
不意に後ろから、蛙男に話しかけられた。
いや、別に私が話しかけられたわけではないのだが。
用があるのは私ではなくハク様の方だ。
振り向く頃には、もうハクは先程とは全く違う、仕事人の顔つきになっていた。
目ばかりぎょろりとキツいものだから、目線だけで人くらい殺せそうだ。
ハク「わかった、リンを呼べ。
ゆり、後はリンに案内させる。
終わったら部屋に戻れ」
それだけいうと、ハクは踵を翻してズンズンと進んでいった。
A「……はーい」
適当な返事をして、どんどん遠くなるハクの背中を見つめる。
__なんだか、彼の背中を見つめてばっかりだ。
取り残された私と、蛙男の目が合う。
蛙男は顔をひきつらせながら私に会釈をして、小走りで廊下をかけていった。
……どうすればいいの、1人で、こんなところで。
「___ねえ見て、ゆり様よ」
「__お顔が小さくて綺麗ねぇ」
「__そうねぇ、でも____」
ああ、やっぱり、1人でいると、痛いくらいに視線を感じる。
嫌になるほど、話し声が耳に入ってくる。
好奇、羨望、そして嫉妬、ああ、そんなに見ないで欲しい、体に穴が空いてしまいそうだ!
A「鬱だ……」
駄目だ、私ここで働いていける気がしない。
ハクの言っていた"リン"っていつ来るのだろう、優しい人だといいな。
どうしよう、「どうしてあんたがハク様と一緒なのよ!」とか言われたら。
どうしよう背中に「馬鹿」って書かれた紙を知らぬ間に貼られてたら。
中学生のいじめかな……??
あ、鬱だわ。やっぱり鬱だわ。
_リン、リン!
あちらでゆり様がお待ちだ!
遠くの方で蛙男の声がする。私に会釈をして去っていった、あいつだ。
どうやら言いつけ通りリンという人を探しに行っているようだ。
蛙男の大きな声を聞きながら、ふと、私やハクにはあんなに下手に出るのに、自分の部下には高圧的なのだな、と思った。声のトーンがまるで違う。
_はぁ!?ゆり様があたしに何の用だよ!
_つべこべ言わずにはよう来い!
_ったく、やってらんねえよ!
言葉遣いを聞く限り、リンという人はなんとも男勝りな性格の女性らしい。
……リンさん、忙しい中私のためにごめんなさい、罪悪感で胸が痛いよ。
声のするほうを見ながら、来るであろうそのリンさんと蛙男を待つ。
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ちゅん(プロフ) - 凄く素敵なお話ですね^_^続きが凄く気になります(^^) (2022年3月25日 23時) (レス) @page48 id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
猫 - 今更かもですが、私も続き気になります…。 (2018年11月16日 19時) (レス) id: 08a665f28f (このIDを非表示/違反報告)
れんらん(プロフ) - 更新お願いします! (2018年8月9日 19時) (レス) id: 0c5afdadd2 (このIDを非表示/違反報告)
KA☆SE☆I(プロフ) - 続きがめっちゃ気になります!更新頑張ってください! (2018年6月10日 19時) (レス) id: 34b5e9b2d8 (このIDを非表示/違反報告)
YuRa(プロフ) - ねこさん» 続く予定です!筆者の受験が終わりましたら、更新を多くしていきたいと思います! (2018年3月4日 14時) (レス) id: 16af3255b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:YuRa x他1人 | 作成日時:2016年11月27日 14時