◆時枝充【頬】 ページ15
【蜜柑色のセーターに】
この時期は花粉症がひどくなる。友達も腫れぼったい目を擦りながら登校していて、見ている此方が痒くなりそうなくらいだ。
『大丈夫、痒い?』
「めっちゃ痒い。死ぬ」
なんていう会話を学校に着くまで2、3回した。寒暖差もあって、前日は暖かかったのに今日は寒い。気温は確か4度だった。
私は花粉症ではないので、友達の辛さは分からない。痒い痒いと言われてもさっぱりだ。今日も今日とてつまらない授業を聞き流す。
『あー、刺激が欲しい』
「それ、この前も言ってたよね」
隣で溜め息をつかれて、唇を尖らせた。いいよね、とっきーは。広報担当で毎日が刺激あるじゃないか。こちとら、防衛任務だ。
五日に一度のペースで米屋先輩にランク戦を申し込まれ、三日に一度のペースで菊地原くんの毒舌の餌食になり、風間さんに撫でられる。
「でもさ、A」
『んー……?』
「Aは今のままでも楽しいんでしょ?」
『え?……そだ、ね』
とっきーの瞳がすぅっと細まる。眠たくてそれどころじゃないし、構っている暇はない。蜜柑色のセーターに顔を埋めてはにかんだ。
『いつも通りも嫌じゃないけどね』
「うん」
『幸せが増えたら嬉しいでしょ?』
だから刺激を求めるの。危険な刺激じゃなくって、驚いてから笑えるような刺激が欲しいの。心がぽかぽかするだけで満足なのです。
とっきーはそっか、なんて言って手元の参考書に再び目を向けた。学校もボーダーもお休みなのに偉いなあ。私はやる気出ないや。
「Aはいい子だね」
『とっきーほどじゃないよ。模範的でもないし、サポート力もないし』
「そういうことじゃなくて」
首を傾けると、本からまた顔を上げて此方に手を伸ばしてきた。頭を撫でてから笑顔でとっきーは、小さく呟くように言葉を紡ぐ。
「幸せって結局は“皆”のでしょ」
『……あれ、何で分かったの』
「俺、Aの事はA以上に知ってるよ」
『私はとっきーの事、そんなに知らないよ』
「それでも良いよ」
頬に優しい感触が降ってきた。手の中のココアが揺れる。キス、された。驚きと恥ずかしさ、顔が真っ赤になって。あれ、もしかして。
満足そうに笑ってまた本に視線を戻す彼。カフェのカウンターで腰掛けている姿は様になっている。あぁ、とってもカッコいいな。
(とっきー……)
(なぁに、A)
(すき)
(うん、知ってる)
カフェの幸せがココアに浮かんだ。
【頬=親愛】
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きざみん - こんばんはセニオリスさんの小説好きです。失礼ですけど空閑君って書けますか？書けたらよろしくお願いします。キスの場所はどこでも良いので、出来たらよろしくお願いします。 (2023年2月22日 21時) (
レス) id: 4cee241057 (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - イツキ108さん» 此方こそ、返信が遅れて申し訳ないです。あまり期待に応えられていない文章になってしまってすいません。リクエスト有難う御座いました。 (2020年5月18日 22時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
イツキ108(プロフ) - セニオリスさん» こんばんは。以前文ストの花言葉のリクエストをさせて頂きました、イツキです。お礼をリクエストさせて頂いたページにと思ったのですが、コメントが出来ず他ジャンルでのページの返信になりご迷惑をおかけします。リクエストのお礼が後れた事、大変申し訳ありません。 (2020年5月7日 19時) (レス) id: ed04064b47 (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - 白縋さん» 了解しました。書ける時に好きなタイミングで書かせていただきます。 (2020年2月24日 11時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
白縋 - リクエスト/キャラ:二宮さん 、カゲ キスの場所:腰 お目通しいただければ幸いです。 (2020年2月24日 3時) (レス) id: cc60f72ddc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：セニオリス | 作成日時：2020年1月2日 10時
