美味しいものの価値。太宰 ページ1
「やァ、今日は素晴らしい」
「……まだ言いますか？太宰さん。そろそろ通報しますよ？覚悟してくださいね」
眉目秀麗な青年の顔が固まった。先ほどの笑顔とは一転、何も言えない顔になる。彼女はいつになっても靡かない。どんなに強風が吹き荒れてもビクともしない。そんな強い大木のような気持ちがあるのだろう。
「ねぇ、敦くん、おいしいごはん屋見つけたんだけどー、あ、鏡花も行く？」
黙った太宰を確認して遠くにいる黒髪でふたつに結んでいる少女と白髪の特徴的な髪型をした青年に向けて声を発する。片手をあげている。その手には店が記された地図があった。
「今日は何を食べるのかい？」
「あれ、死にたいのに気になりますか？まぁそういうと失礼ですよね。
冷たい冷水に浸かりながら泣きわめくよりも安くて美味しい御飯食べたいと思いませんか？」
ちなみにカツ丼が美味しいんですよ、と付け足す。青年の瞳をじっくりと捉えた。あどけなく、どこか妖艶な瞳で見つめる。手首に向かって指を伸ばした。
「行きましょう！最後の晩餐とでも喚くのは構いませんよ。
私の人生は私のものなの出しあなたと死ぬほどあなたに飢えてはないけど、あなたにこの人生の価値や楽しさを教えることは可能なんです、それも私の自由です」
「こりゃ年寄りみたいなこと言うね」
口に手を当ててクスリと笑う。12時の金が鳴った。
_____
美味しそうにお茶漬けをここに来てまで頼む敦くんと湯豆腐ばかり食べる鏡花ちゃんととんかつ大盛りを食べているA。
そんな中、あ、と思いついたように口を開いた。
「ちなみに結婚したら奥さんに何を作ってもらいますか」
「それは、どういう質問なのかな」
「……作ってあげましょうか、蟹雑炊でも、蟹グラタンでも」
「それは魅力的だね」
蟹でつられるんですね、ろくな女に出会いませんよ、と横目で見られながら言われる。彼女は自分の頼んだ蟹へと手が伸びていた。
「剥いてあげます、もしかしたら死ぬことよりも女がカニの殻むくほうが見てて楽しいかも知れません」
「ちょっと、私のこと莫迦にしてるよね」
剥いた蟹を持っている手の手首を握って自分の方へと近づける。そのまま口に含んで食べ進んで彼女の指にキスをした。
「私は彼女ごと食べるのが希望かな」
「蟹だけにカニバリズムですね」
駄洒落を鼻で笑い飛ばした彼女はまた美味しそうに食べていた。
釣れないなぁ…
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ひな(プロフ) - まーちゃんの新作っ!!!まーちゃんの書く文ストが大好きです！どれも読んでてツラい！(褒めてます)これからこの短編がどんな風に進んでいくのかがとっても楽しみです！まーちゃんも忙しくて大変だと思うけど、更新頑張ってね！何時までも応援してるよー！ (2018年5月9日 18時) (
レス) id: a17b4c9a51 (このIDを非表示/違反報告)
チキンカツ - 枕崎さんの作品は、表現が良くて大好きですっ。作品は全部読んでます、芥川のお話面白かったです〜。 (2018年5月7日 22時) (レス) id: 0708dadb3c (このIDを非表示/違反報告)
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