第9話「優しい香り」 ページ11
貴方「………あともう一つ、我が儘言っても良いですか？」
森「あと一つだけで良いのかい？」
私が、そう問えば首領はくすりと困ったように笑った。
貴方「はい。…………その、もう一度だけで良いので…抱き締めて、くれませんか？」
首領は、ぱちぱちと目を動かすと、次の瞬間
森「まさかだけど、それが我が儘なのかね？」
と片手で顔を覆ってくつくつと笑っていた。
貴方「駄目、ですかね……？すみません………」
森「おや、何故謝るのだね？君は少々早急に諦めてしまうようだ。」
私が消え入りそうな声で呟けば、首領は微笑んでそう言った。
貴方「ごめ、なさ…………」
森「ははっ、怒ってる訳ではないよ。」
そう言うと、首領は私の手をゆっくりと握り締めた。
そのまま、流れるように私の背中に手を回し、深く抱き締めた。
ふわり、と香水だろうか？優しい香りが鼻腔を擽る。
私も、首領の背中に手を回し、首領の胸元に顔を埋める。
恥ずかしさや、今、抱き締めている相手が誰だとかは考えていなかった。
ただ、温もりがとても恋しかった。
首領の体温は低いと思っていたが、とても暖かく、心臓のとくんとくんという音に、ひどく安心した。
貴方「首領、私、なんかに、ありがと、ございます……」
森「おや、自分なんか、などと卑下しては駄目だよ。Aちゃんは私の大切なマフィアの一員なのだからね。」
そう、子供をあやすような声で囁かれると、私は安心したのと泣いたのもあり、瞼が重くなってきた。
森「寝ても大丈夫だからね。」
ちゅと短く額にキスが落ちてくる。
貴方「しゅ、りょ…起きたら、ほんとの、こと……話し、ます、ね………」
私はそう途切れ途切れに言葉を紡いで、意識を飛ばした。
最後の最後まで首領の体温と、優しい香りを感じながら。
意識を飛ばす前に見た、首領の表情がひどく穏やかで、とても安心するものだった。
朦朧とする意識の中で首領は、
森「おやすみ、A。」
と、言っていたような気がした。
そうして、深い、深い、闇の中へと落ちていく。
目が覚めたら、首領に本当の事を話そう。
大丈夫。首領なら、信じてくれる。
そんな気がした。
────突然この文ストという世界に来て、ポートマフィアなんていう悪の組織の一員となって凄く不安だった。
いつか、殺されるかもしれない。
そんな恐怖と隣合わせでいるのが、嫌だった。
だけど、何とかここまでやれてこれたのは……
首領、貴方が居たからなんですよ。
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舞 - 首領のルビ、ボスのはずなんですが...なんだか違和感があるんですよね「しゅ、首領」みたいなセリフの時内容はとても面白くてワクワクしながら読んでいます！ (2018年7月2日 22時) (
レス) id: 338b13862d (このIDを非表示/違反報告)
レイナ(プロフ) - 原作しか見てないのでアニメではどうなってるのかわからないのですが、首領の読み方はそのままでなくボスだと思います！更新楽しみにしてます頑張ってください^^*（同コメありましたらすみません） (2017年9月30日 0時) (レス) id: cfd67c96bc (このIDを非表示/違反報告)
浅葱_桜(プロフ) - 森さん(^q^)うぇへへ……なのですが、設定ページで三人称の意味合いが違うと……ヾ(・д・｀;)heとかsheとかｼﾞｬ (2017年8月18日 22時) (レス) id: 638a6231c6 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ@現実逃避(プロフ) - きなこさん» 初コメントありがとうございます。この作品で森さん好きが増えたのであればこの上ない喜びですね。企画も賛成して下さり…感謝です。暖かい言葉嬉しかったです。これからも、不甲斐ない作者ではありますが、よろしくお願いしますね*_ _)ﾍﾟｺﾘ (2017年6月22日 23時) (レス) id: a2afccea58 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ@現実逃避(プロフ) - 晋陽さん» 森さんの色気は上手く描写出来ていますかね…？それならばとても嬉しいのですが…コメントありがとうございます。これからも、よろしくお願いしますね*_ _)ﾍﾟｺﾘ (2017年6月22日 23時) (レス) id: a2afccea58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルリ@現実逃避 | 作成日時：2017年2月1日 21時
