fire.9 ページ9
吉行と私の火傷について説明すると、五虎退は大きな目から涙を零した。
「なんでおんしが泣くがか！？」
「な、なんででしょう…僕にも分からないんですぅ…」
私は小さな背中を擦り、泣き止ませた。
「改めて、五虎退。これからよろしくな。出来たての本丸で訳ありの審神者と初期刀だが着いてきて欲しい。」
「はっ、はい！僕もお二人を支えられるよう強くなります…！」
それから数回の鍛刀を行い、少しずつ本丸は賑やかになっていった。
ただ、政府からチュートリアル以降、出陣はおろか、遠征の許可が降りず、実戦を詰めないでいた。
皆、手合わせなどでどうにか強くなろうと頑張ってくれている。だが、実戦を積まねば練度は上がらないままのため、みんな渋っていた。
先日、とうとう私の堪忍袋の緒が切れて政府に乗り込もうとしていたのを男士達に全力で止められた。
なので政府に怒りを込めた長文の電報を送るだけで済ましてやったのだ。
すると、あっさり出陣の許可が降りた。しかし、"審神者同行の上"という妙な言葉を添えて。
大方、吉行のことのためだろうが、私が戦場に赴いたところでお荷物にしかならないだろう。
私に戦う力など無いに等しい、自らに結界を張ることが限界である。
「どうしたもんかにゃぁ〜…」
「難易度が1番低い戦場ですから、遡行軍が少ないとか、は、ない、ですよ、ね…」
「あるかもしれんが、戦場には変わらんきに…必然的にごこや短刀らぁが主を守るっちゅうことになるがやけど…」
「全力を尽くします…！」
「っちゅうことじゃが、えいか、主」
「やはり政府に直談判した方がいいんじゃ…」
「だめじゃ、そがなこといって資金要求しに行って頭に包帯巻いて帰ってきた時にゃ、肝を冷やしたぜよ…」
政府でも口うるさいと有名な禿げ爺に当たってしまい、しつこく話したら突き飛ばされ、その拍子に頭を打った。
吉行にその日のことを言われ、ぐうの音も出ず黙り込んだ。
「行かないって訳にはいかん、ワシらも腹を括る。主も腹を括るぜよ。」
…顕現したてのときより随分と頼りになる。
吉行がいれば、なんとかなる。
胸に手を当て言葉を反芻し、出陣の準備を始めた。
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作者名：宵ノ月 | 作成日時：2023年9月28日 6時
