黎明に縋る僕達は。 (ページ8)

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fire.8 ページ8

お土産に買ったカステラを大事そうに持って、鼻歌を歌いながら歩く吉行を尻目に今後のことを考えた。

まずは、仲間を増やす所からだろうか…

となると、鍛刀。もしくは戦に出て新しい刀剣を探すかの2択。

だが、先日の戦のこともあり吉行の力をまた使うことになる機会は極力無くしたいのが本音だ。

そうなると必然的に鍛刀をするしかなくなる。

思わず溜息を吐いた。

「す、すまんちや！もう食べ過ぎることは控えるき！このかすてぃらだけは勘弁しとうせぇ…」

甘味処で目に入るもの全てを食い尽くし、帰路の間でお土産で買った煎餅をも食い尽くした吉行がオロオロと顔色を窺ってきた。

「…今後はもっと出費が多くなるから気を付けるように」

「商談はわしに任せて欲しいぜよ！値切りに値切っちゃる！」

「その時は頼む、が、今は鍛刀についてだ。2人では流石に本丸を運営するには限界がある。」

本丸の扉を開ける吉行の手が止まる。不安なのはやはり同じだったらしい。

「わしのような力を持たずに来て欲しいにゃあ…」

「…腹を括るしかないよな、とりあえず鍛刀に取り掛かろう。…吉行は近くで見守ってくれると助かる。」

「隣で見守っちゅうよ。主なら大丈夫じゃ。」

鍛刀場に向かい、資材諸々を用意し霊力を込める。

そうして出来た短刀に再び霊力を流し、段々と光を帯びていった。

2人で固唾を飲んで見守っていると徐々に人型へと変貌していく。

完全に姿を変えた短刀の目が開いた。

「僕は、五虎退です。あの…」

「「傷は…！！」」

「ふぇ…！」

「いきなりすまん、吉行確認を頼む。」

「顕現したばかりなんじゃが、体に異変はないかえ…？火傷跡とか…」

思わず顔を逸らし膝の上で握り拳を作った。

不安、葛藤、後悔、憎悪、矛盾、固く結んだ拳が小刻みに震える。

どうか、もう誰も苦しませたくないんだ…！

「今のところは何も無いです…」

「…ッ！！」

思わず五虎退に抱きつく。いつかこの火傷は呪いのようにこの子を蝕むと思うと本当に怖かった。

「よかった…よかったのぉ主…！！」

吉行が私たち二人に覆い被さるように抱きつき、何も知らない五虎退は目を丸くしていた。