黎明に縋る僕達は。 (ページ4)

今日:3 hit、昨日:12 hit、合計:3,094 hit

fire.4 ページ4

初めて立つ戦場は殺伐としていて、一切の情を感じない雰囲気だった。

深呼吸をしようと息を吸ったとき、全身から力が抜け膝から崩れ落ちた。

「主！！」

「大丈夫だ、こんのすけこれは時間圧か…？」

「そうでございます。審神者様にはお身体の負担となりますが少しだけ耐えてくださいませ…」

今後は本丸から遠隔で司令を出すことになるだろう。刀剣男士達も少なからずはこの時間圧を受け、身体へ障害を及ぼすかもしれない。

「私ばかり安全なところにいるのでは示しがつかない。1度くらいは刀剣男士達の苦労を感じねばならないと思っていた。」

「おんしゃあのことはわしが守るき、じゃが無理はせんで、これからっちゅうのにこがな所で倒れられたら元も子もないきにゃあ。」

「手間をかけるな、よろしく頼む。」

楽しげに話すのも束の間。身の毛がよだつような殺気に体が震えた。

前方にこの世と思えぬ異形の者が見えた。

「あれが…遡行軍…！」

「主、物陰に隠れちょき。流れ弾を喰らわせたくはないぜよ。」

陸奥守は自身の持つ拳銃に弾を装填し、遡行軍と向かい合う。

私は言われたとおり近くの木陰に身を隠した。

「グゥ…アァァァァ！！」

遡行軍は大きく振りかぶり陸奥守に切りかかる。

金属がぶつかり合う音、発砲音、飛び散る火花、赤い鮮血…

激しい打ち合いを制したのは、遡行軍だった。

陸奥守は、脇腹を右から左に切り裂かれ膝をついた。

苦しげに顔を歪ませ、それでもなお遡行軍から顔を逸らさない、言葉どおりの必死。

嫌だ、ダメ、やめて、お願い、やめて、やめてよ…

「吉行！！！！！！」

サッと血の気が引くのと同時にこれまでに出したことない声で叫んだ。

「…ッ！！！ええい、わしに抜かせたな…！！」

決死の覚悟で放った一太刀は見事に敵を真っ二つに切り捨てた。

…刀身に、真っ赤に燃え盛る炎を纏って。