sun fire. ページ24
第１部隊帰還の記念に宴を開き、ほとぼりが冷めた頃。
一人宴の円から離れ、月夜酒をしている吉行を見つけた。
「お隣いいか？」
「おぉー、かまんよ。」
隣に腰掛け、同じように月を見上げた。今日の月はおぼろげにそこのあり、照らすわけでもなく、ただこちらを見下ろしているようだった。
「わしは、どちらかというと月かのう...」
突拍子もなく放たれたその言葉は大広間の喧騒に紛れ消え落ちていく。
拾おうとした手は行き場をなくす。
なんて答えるのが正解か分からなかったからだ。
拾おうと思えば拾えたのに、心の何処かでそう思ってしまい勝手にブレーキがかかったのだ。
出会ったその日、何の疑いもなく太陽だと思った。
今の吉行を見る限り、そんなことないのかもしれない。ただ、私にとって吉行は太陽だ。それは決して変わることはない。
「さしづめ、海に映る太陽ではないか？朧げで、常に揺らいでいる。しかし、反射している光は本物の太陽に引けを取らない。まさに吉行らしいと思うがな。」
吉行はそうがか。と小さくいって酒を煽った。
また小さく静寂が流れたあと、短刀たちが花火を始めた。それをきっかけにか吉行がまた溢す。
「遡行軍の襲撃のとき、見ての通りボロボロで最悪だったんじゃ。でも、ここで死んでられん。帰らにゃ、主の側におらにゃいかん。って思って...自分の炎も何も怖くなかった。今は、ただ、死ぬのが怖い。主の側におれんくなるのが...」
「...私は、吉行がいなくならない限り、死なない。まあ、人間的な寿命の問題はあるけどなぁ。」
「うぅ〜...！！あるじぃ、死なんでくれぇ...」
酔っ払った吉行がでかい図体を容赦なく潰しにかかるように倒れ込んできた。
その拍子に触れ合った吉行の左手と私の火傷跡は、以前のような痛みはなく、ほんのり温かくなった。
なんとも。とうとう乗り越えたか。
二人で顔を見合わせ、その暖かさを堪能していたらそのまま寝落ちてしまったらしい。
翌日、襖から見えた夜明けの太陽は今までになく、美しいと思った。
あの日の炎のように。
end...
終わり
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作者名：宵ノ月 | 作成日時：2023年9月28日 6時
