黎明に縋る僕達は。 (ページ23)

今日:14 hit、昨日:12 hit、合計:3,105 hit

fire.23 ページ23

第１部隊の手入れが済み、一段落して審神者の部屋に集合した。

「此度の戦い、よく生きて帰ってきてくれた。ありがとう。」

「主の戦略あってこそやき、なんちゃあないぜよ！わしらは任務を遂行しただけじゃ！」

吉行の豪快な笑顔につられ他の男子達も困ったように笑ってみせた。

「ま、最期は肝を冷やしたけどなぁ。陸奥守の旦那がいなけりゃ帰ってこられなかったかもしれねぇしな。悔しいが今回の誉は旦那に譲るぜ。」

「まさか僕らの後ろにも遡行軍がいたなんて思ってませんでした...」

当時の状況を聞くと、追いかけていた遡行軍の他にも別部隊の遡行軍が自分達を追いかけていたようで、追いつくってときに挟み撃ちの形で襲撃されたということらしい。

「通信装置が壊れてからそんなことが...なんだか、元から狙われていたのはこちらだったかのように思わせる戦略だな...」

私の言葉で吉行の表情が居心地の悪そうなものへと変わる。そんな吉行をほら、言わないとだめですよ！と鯰尾が小突いた。

なんのことか分からず首をかしげていたら、吉行の口が開かれた。

「いやぁ～...そのことなんじゃがな...？主と通信中に襲撃されたき、びっくりしてしもて、思いっきり握ったら、ヒビ入ったんじゃ...すまん、わしが壊したんじゃあ〜...ほんに、すまんの〜！！」

吉行は額の上の方で手を合わせ大袈裟に謝った。

「命に別条はなかったんだ、装置の１つや２つ安いもんだ、直せばまた使えるしな。それで、装置は今どこに？」

吉行はさらに小さく頭がめり込むほど縮こまった。そんな様子を見て呆れたように大倶利伽羅が口を開いた。

「その装置は陸奥守が戦闘中に投げて敵にぶつけて粉々になった。部品も何もかも、あっちの土の中だ。」

「伽羅ぁ〜！」

ぶつけて、粉々...呆れて言葉も出ず、助かったんならまあいいかと深くため息を吐くと吉行はわかりやすく肩を揺らした。

「言いたいことは、分かるな？」

「はい、」

「あれは政府の配給品だ。そして何より高い。」

「はぃ、」

「勝てばいいにしても、物は大事に使うこと。」

「はぃぃぃ、」

誉に免じて罰は与えないことにした。