fire.22 ページ22
待ち始めて数十分もしないとき、転移門が光りだした。
あまりに突然の出来事で一斉に男士たちが戦闘態勢に入った。
ここからくるのは、よければ男士、悪くて遡行軍だ。
まだ練度も低く、第１部隊に比べ実戦経験の浅い男士が多い。この本丸に数十匹の遡行軍が入ってきたら、いくら刀剣男士でも生きていられる可能性は限りなく低いだろう。
男子たちが幾層にもなって転移門から私を遠ざける。
私の前にいるのは、秋田と歌仙。二人共、構えた刀がわずかに震えていた。
緊迫した空気があたりを漂う。
更に光を強めた転移門から人影が浮かぶ。
どんどんと濃くなったシルエットと同時に、最悪の場合が脳裏に浮かんでしまい、未だに信じきれていなかった自分に嫌気が差し、顔を伏せた。
転移門に一番近いところにいた加州は、人影から目を背けず、いつでも切り込めるように構えた。
だが一転して、見知ったシルエットが近づいているような気がして上手く力が入らなかった。
橙色の着物に、跳ねた髪、尻尾のように垂れた武装具。
あいつに模した敵かもしれない。気を緩めてはいけない。刀を握れ、主は俺が守るんだ。
そう思わないといけないのに、なんだか暖かな気持ちにさせるあいつの雰囲気がこっちにまで伝わるようでならなかった。
俺たちの主を泣かしやがって。許さない、絶対許さない。俺だったら泣かさないのに、愛してもらってるくせに、心配させやがって、くそっ、絶対に...
「バカ、遅ぇよ...」
シルエットはくっきりと輪郭を捉え確信に変えた。
「帰ったぜよー！」
一同が緊張を解き地面にヘタってくのを見て、当の本人はなんじゃあ！？とひょうきんな声を上げた。
「ばかばかばか！！！遅いんだよ！！しかもなんだよ！なんで通信装置壊れたの！ほんと、俺たち心配して...うぅ、こんな事言う予定じゃなかったのに...！いいから早く主のとこ行けよこの野武士！！！」
加州に背中を蹴られ主の前に立たされた吉行を、じっと見つめた。
少し恥ずかしそうに頭を掻いていた吉行は私の目線似合わせてかがみ、口を開いた。
「ただいま、帰ったがよ。心配をかけてすまんにゃあ...」
「本当だこのバカ。...おかえり、私の吉行。」
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作者名：宵ノ月 | 作成日時：2023年9月28日 6時
