fire.3 ページ3
真っ直ぐにこっちを見つめる橙色の瞳を見て、刀身に合う素晴らしい姿だと思った。
成功だ。安堵に胸を撫で下ろした。
「おんしゃあがわしの新しい主がか？？よろしく頼むぜよ！」
「あぁ、拙い主だがよろしく頼む」
差し出された手を握ると皮膚が爛れるような感覚に襲われた。咄嗟に離すと陸奥守も同じように感じたようで自分の手を摩っていた。
まるで、あの日の炎のような…
顔の火傷がヒリついた。
「陸奥守、一度本体を見せてくれるだろうか。」
「かまんぜよ。」
陸奥守吉行から手渡された刀身を抜き観察した。すると、
「こんのすけ。刀帳にこの傷跡は記されているか？」
「いえ…陸奥守吉行は再刃されておりますので、無いはずでございます…」
顕現前のときは無かったはず…いや、そこまでは確認できていない、ということは…
「審神者様、如何致しましょうか。この後は実技演習のため、審神者様に同行していただき、出陣の手筈となっております。」
「…とりあえず出陣しましょう。」
傷跡のことは引っかかるところがあるが、だからといって全く機能しないことはないと判断し、出陣の準備を始めた。
「戦のぉ…」
「陸奥守吉行は守り刀だったな。」
「そうじゃ。龍馬は剣の腕はよかったんじゃが、時代は銃やったき…」
「…それでも坂本龍馬は君を手放さなかった。このことに意味があるんじゃないか？」
「やき、刀としてこがな嬉しいことはないぜよ！」
「あぁ、だがここでは戦う事が本分になる。君らしい戦いを見せてくれ。」
「任しちょけ！！」
前向きで真っ直ぐな笑顔を向ける陸奥守に背中を押され、戦場へと向かった。
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作者名：宵ノ月 | 作成日時：2023年9月28日 6時
