黎明に縋る僕達は。 (ページ20)

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審神者部屋で1人。皆の戦況を表示するディスプレイと向き合っていた。

時間圧や戦場、皆の生存状態やバイタルが表示されるそれに、皆の顔も姿も映されることはない。

ただ、陣形や出陣命令を声でのみ伝えることが出来る。

〘主！薬研とごこの偵察によると相手は打刀四振りと脇差二振りらしいぜよ！陣形はどうするがか？〙

「とりあえず、逆行陣で進んでくれ。その編成だと、機動はこっちの方が高いはずだ。薬研と五虎退を中心に仕掛け、確実に討ち取ってくれ。」

〘了解したぜよ！〙

今回は中国大返しを行う豊臣秀吉の護衛である。入り組んだ森の中を進むため、暗闇に乗じて秀吉の首を取る算段だろう。遡行軍の後ろから追いかけ、何も知られず討ち取ることを目標としている。

出陣命令を出したら、あとは皆を信じて待つ他ない。

何も行動できない、皆の盾になることも、傷を癒やすことも、活路を見出すこともできない。

だからといって、実際に戦場に立ったときに自分に出来ることなんてたかが知れている。よく言って壁、悪く言って足枷だ。

自分の無力さに心底腹がたった。

ただひたすら、生きて帰ることを祈るしかなかった。

男子たちは心配は杞憂だと体現するように攻め進んで行く。

〘主！遡行軍の本隊を見つけたぜよ！どう出る！〙

「確実を狙え！目標達成の前に皆が生きて帰ることが大前提だ！」

〘分かっちゅう！わしr...は、あるz...かr...〙

「吉行？？」

〘そk...なんでうs...ﾊﾟｧﾝ!ﾊﾟｧﾝ!...あr...！〙

「吉行！何があったんだ！！応答しろ！！」

最期に聞こえたのは銃声、耳をつんざく金属と金属がぶつかる音、バツッといってうんともすんとも言わなくなったスピーカーだった。