fire.19(陸奥守吉行side) ページ19
主はわしの全てを受け入れてくれた。ならば次は、わしが主に応える番じゃろう。
本丸に残る仲間の声に背中を押され、時空転送装置を力いっぱいに押した。
今回は主は同行せんでの出陣。何が起ころうとわしらの力で乗り越えんといかん。
刀を掴む手に力が入り、カタカタと音を鳴らす。
それを見越した小さな手が、静かにわしの手の上に添えられた。
「陸奥守さん、1人じゃ、ないです。」
そういう五虎退の手も、冷たく震えていた。
「旦那は気負い過ぎだ。俺らの命を預かってくれてるようでありがたいが、その旦那の命は誰が預かるんだ？」
薬研のその言葉に呼応してその他の三振りも続々と手を重ねていく。
「そうだよ。陸奥守くんが寝ている間、皆とても心配していたし、それと同時に自分を悔いたんだ。ね、伽羅ちゃん？」
「…俺は別に。だが、…1人で背負いすぎて勝手に折れるくらいなら、他の奴らを頼れ。」
「その中に大倶利伽羅さんも入ってますもんね！手入れ部屋の番を買って出ていたのはそういうことですよね！」
鯰尾の言葉で全員の視線が大倶利伽羅に集まり、当の本人は視線を逸らして口を結んでいた。
わしは、仲間に恵まれた…
自然と緩む頬を必死に手で抑え、涙を堪えるのに目頭が熱く痛むのを感じた。
皆の期待に応えんといかんにゃぁ、そがに心配をかけてしもたきに、何十倍にもして返さんといかんがよ…！
「なんじゃあ！伽羅はつんでれじゃのう！！」
わしゃわしゃっと伽羅の頭に手をやるとやめろち振り払われた。
それすらもなんだか嬉しくて大口を開けて笑ってしもた。
「しんみりしてる場合じゃないがよ！わしはあの本丸に生きて帰るぜよ！皆で！力を合わせて！遡行軍にも、政府のちょっかいにも負けん！逃げん！最後に勝って笑えるように…！」
肺いっぱいに息を吸って喉がちぎれんばかりに叫ぶ。
「行くぜよ！！！！」
「「「「応！！！！！！」」」」
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作者名：宵ノ月 | 作成日時：2023年9月28日 6時
