黎明に縋る僕達は。 (ページ18)

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fire.18 ページ18

出陣当日の朝。

恨めしく思うほどの晴天を睨みつけるように太陽と向き合った。

もう何も怖くない。お前に脅えながら過ごす日々はもう来ない。悪かったな、私達は強くなったんだ。

「主。」

後ろを振り向くと戦装束に着替えた吉行がいた。その表情は、不安と、緊張、何かに縋っていたいと乞うような眉をひそめた顔。

「なんて顔してるんだ、前にあれだけ息巻いていたのに。」

「…本当は笑おうと思っちょったんじゃが、主の顔見たら、力抜けてしもうたぜよ…」

おもむろに近付くと腰を曲げて肩口に顔を埋めてきた。

そして、風と共に消えてしまいそうな声で"怖い"と呟いた。

小さく震える頭に手を添えた。ぴょんぴょんとはねた髪を梳くようにゆっくりと撫でる。

「…心から笑え。心から笑えるまで前を向け、仲間を信じろ…お前なら出来る。共に、夜明けを掴むぞ。」

目尻を赤めた頬に手を添え、琥珀色の目に言い聞かせた。

嘘だろうが、お世辞だろうが、諦めなければ、信じ続ければ、不可能はないと知っている。

その炎も、過去も、逸話も全て味方に付けて、掴め。

琥珀色の目に映る自分がどんどんと歪んで崩れていく。その欠片が私の頬を伝った。

「敵わんにゃぁ…ほんに、敵わん…」

肩口が湿って温みが広がると感じたと同時に視界が一気に開けた。

吉行の頭が下に見えて、花開くように笑う顔でこっちを見上げていた。

「わしは、陸奥守吉行じゃ…！主の、刀ぜよ！！諦めん、わしらは諦めん、負けん…！！」

「その意気だ！！自信持って行けよ！」

「おぅ！」

暇なく回る視界いっぱいの吉行の笑顔はいつになく晴れやかだった。