fire.2 ページ2
「豊後国第四二三八本丸、指定要注意人物A。出ろ。」
重苦しく開いた監獄から腕を引かれ、目を布で覆われて何も見えないまま歩かされた。
その道中聞いたのは、全国的な審神者の人材不足により時間遡行軍の進軍を止めることが難しくなったため、急遽霊力を持つ人間を誰彼構わず強制的に審神者にさせるという、非人道的な政策を行っていること。
そしてその"誰彼構わず"に私も対象になったこと。
「顔を上げろ。」
布を乱暴に取られ初めに見た景色は、5本並ぶ刀と、いつぶりか見た管狐。その耳は野良猫のように切れこみが入れられており、何やらこちらも訳ありのようだ。
「初期刀を選べ。その後は管狐が教えてくれる。」
そう言い残し政府の人間と思われる男は足早に部屋から出て行った。神に拒絶された人物といたらどうなるか知ったもんじゃないと思ったのだろう。
そんな人間でさえ審神者に起用するほど政府が切羽詰まっていることに心の中で笑ってやった。
「では審神者様、この五振りの中から始まりの一振を選んでくださいませ！」
改めて五振りの刀と向き合う。
それぞれ違う霊力で満ち溢れている。
その中一際私の目についた刀からは、まるで太陽のように暖かく、燃え盛る炎が揺らめくかの如く強い意志を感じた。
「…この刀は」
「その刀は刀帳番号九十六番、陸奥守吉行です！土佐の名刀であり坂本龍馬の佩刀でございます！」
「むつのかみ…」
この刀、何か他と違う。
その違和感に胸がざわつきながら刀に手を伸ばす。
柄に手をかけ抜刀してみる。
その刀身は反りもなければ、刃文もなかった。
でもひたすら心を惹かれた。直感だ、君がいい。
「この刀にします。」
「了解いたしました！では顕現の儀にて刀剣に魂と人の身をお与えください！」
また失敗するかもしれないという恐怖に手が震えた。でも君に会ってみたい。
「陸奥守吉行よ、私の気持ちに応えてくれ…」
刀剣に霊力を流していくと光を宿してみるみるうちに人の身に変わっていった。
「わしゃあ、陸奥守吉行じゃ！さぁ、世界を掴むぜよ！」
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作者名：宵ノ月 | 作成日時：2023年9月28日 6時
