第三章 欲を詰め込んだビニール袋 ページ14
休戦期間、最終日。
これほどまでに目覚めの気分が最悪な朝はあっただろうか。
心のざわつきが邪魔して全く眠れはしなかった、恐らく2時間ほどしか寝ていないと思う。
＿もし、もしこの休戦期間が終われば彼はどこへ行ってしまうのだろう。
今までずっと過ごしてきた彼は、敵国の暗殺兵だ。休戦期間が終われば私の敵になるのではないか？それとも、彼は祖国を裏切ってまでもこちら側に着くのだろうか。
開いた窓から生温い心地の悪い風が吹いてくる、舐め回すように私の身体を包めばそのまま窓から見える青い空へ帰っていく。
そうだ、今日は自分から彼の部屋へ行ってみよう。
そう思えばすぐに支度をして隣にある彼の部屋へ向かった。
コン、コン
木の扉、フィーシの部屋の扉をノックする音が廊下に響き渡る。
そのままフィシー、と声をかけてみるが部屋の中から声は聞こえない。ましてや気配すらも感じなかった。
『…入るぞ』
嫌な予感を胸に扉を開ける、そこには人の居ない寂しい部屋が広がっている。
中途半端に開かれたクローゼットにいつも彼が来ている黒いセーターもズボンも残ってはいなかった。
不安で破裂しそうな心臓を落ち着かせれば、テーブルの上に白い封筒があるのを見つける。
そこにはでかでかと姫さんへ、と書かれていた。
あぁ、この展開、昔見た小説のようだ。
主人公の親友は封筒を残し遠くへ行ってしまう、そんな感じだっただろうか。
小刻みに震える右手を封筒に伸ばせば、ゆっくりと封を開けた。
“今までありがとう”
その8文字は、自分の心を痛ませるには充分すぎた。
呼吸が乱れていくのが感じる、冷や汗が頬をつたっていくのを感じる、足が震えるのを感じる、心が叫ぶのを感じる。
それほどまでに、彼に抱いている感情は大きかった。
がっくりと腰を降ろせば赤いネックレスが視界の端に映る。
『……探しに…行かなくちゃ』
ぎゅ、とネックレスを両手で握れば立ち上がりふらふらとしたおぼつかない足取りで彼の部屋、そのままこっそりと抜け出し城を後にした。
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よぬば(プロフ) - コメントありがとうございます(*^^*)やはり占ツクではこういったシリアスというか、こういう系の小説は少ないですよね…。受け悪いだろうなーと思い作っていたのですがそう言っていただけると本当に嬉しいです…！改めてありがとうございます！ (2017年11月25日 21時) (
レス) id: 0bc43fc3f6 (このIDを非表示/違反報告)
リンク(プロフ) - 今の占ツクには滅多にない良作を発見しました。やっぱり、最近の占ツクにあるような物よりも、こういう文章の書き方の方が好きですね(*´∇｀*)これからも応援させて下さい！ (2017年11月22日 7時) (携帯から) (レス) id: b3533b2202 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よぬば | 作成日時：2017年11月1日 16時
